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2018.5.17 Relation May@神戸Music Bar Brothers & Sisters

2018年05月17日 / 大城 "Jin" 仁榮

2018.5.17 Katzmi × Jin 師弟プロジェクト"Relation May"@神戸Music Bar Brothers & Sisters



僕自身楽器には縁が無くて、ミュージシャンの演奏のテクニックを語ったり、上手い下手という基準で判断することができず、ただただ「好きな音」かどうかということしかわかりません。そんな僕が好きなギターの音を聴かせてくれるギタリスト、Jinさんこと大城仁榮さん。これまでインストゥルメンタル・デュオsala-sajiとして、または数々のミュージシャンのサポート・ギタリストとして、時にはひとり弾き語りと色々な音の表情を見せてくれています。SNS投稿でJinさんがギターの師匠であるKatzmiさんとユニットを組んでライヴを行うとの告知を見て、なんだかとっても気になったのです。申し訳ないのですがKatzmiさんに関しては音どころか名前すら存じあげない方です。ひと回り違いで同じ5月生まれで名付けられたRelation May。Katzmiさんは数々のアーティストのサポートをされているギタリストで、ソロ活動もされていて、それまでエレキ一本だったJinさんが十数年前に出会いアコギの道を開いてくれたそうです。この師弟ユニットがどんな音の表情を見せてくれるのか気になり出したら止まらなくなってしまい、仕事を調整して聴きに行ってみちゃう事にしました。



会場のBrothers & Sistersは三ノ宮の駅から近く、生田神社のすぐそばにあり、サザンロックフレーバー溢れる居心地の良い素敵なお店です。



Katzmiさん、Jinさんがステージのスツールに座りスタンバイした時に、改めて一体どんな音楽を演るんだろうという思いから、よく考えたらそれすらわからないで来てしまったこの場所は神戸なんだよなぁと不思議な気持ちになると同時に、これから始まるライブにちょっと身構えてしまいました。そんな思いを溶かすかのようにKatzmiさんの奏でる優しいギターの音色で始まったのは元々はトラッドでボブ・ディランやカーラ・ボノフも取り上げているお馴染みの名曲「The Water Is Wide」です。身構えていた肩のチカラがスーッと抜けて音に身を任せる事にしました。途中からJinさんのブルースハーブが加わりなんとも心地よい空気です。次にガラッと変わってツイン・アコギで披露されたのはかまやつひろしさんの懐かしいナンバーで「やつらの足音のバラード」です。Katzmiさんは自分と同世代なのでカヴァーされる曲もドンピシャなゾーンの時代の曲でした。こういうのってなんだかとても嬉しいのです。ステージの上と客席と今の置かれた状況は違えど、同じように音楽を聴いて育って来たのだなぁと実感できて、親近感が湧くのです。



長いお付き合いのおふたりが今回ユニットを組む事となった経緯や、Relation Mayとしては正式には今夜が最新のステージなので手探り状態だと言う話、またKatzmiさんの方が書いた曲が多いのでヴォーカルを担当しているなどとトークは続き、掛け合いも面白いしJinさんが良くトークするのも師匠譲りなんだなと思ったほどです。そんなKatzmiさんのオリジナル曲「Toki no yah」「Southern Comfort」と続きました。初めて耳にする曲なのですが、どことなく往年のフォークソングや、ウエストコーストサウンドの香りのする雰囲気です。続いて飛び出したジョン・レノンの「Imagine 」は歌い出しまで何の曲だかわからないほどのアレンジで、ここまでオリジナル・カラーを出してくれるとかえって心地かったです。そこからの流れでのビートルズ・ナンバー「Come Together」もアレンジが施されており、二本のアコギの絡みがめちゃくちゃかっこよかったです。



休憩時間にずっと聞きたくて今更誰にも聞けなかったことをJinさんにこっそりと尋ねてみたのですが、ブルースハープってハーモニカとどう違うの?と言う長年の疑問を実際に吹きながら教えてもらう事が出来ました。ブルースハープって穴が10個しかなく、学校で習ったハーモニカのようにドレミの音階全てが1本で出せるのではなく、CとかFとかいうコードに使われる音階に限定された音で構成されているそうで、だからケースにはコード別のブルースハープが並んでいたのですね。教えてもらうまで荷物になるのになんでたくさん持ってきて、ケース広げて置いて見せびらかせているのだろうって思っていた自分が恥ずかしかったです。



休憩を挟んでのセカンド・ステージは「師匠が始めるまでに歌います!」とJinさんの弾き語りで幕を開けたのですが、選んだ曲がなんと川平ガーデンズのご機嫌なナンバー「都バス」でした。Katzmiさんのギターも加わりノリノリです。一転してしっとりと聴かせてくれたイーグルスの名曲「Desperado」、ふたりのギターの音が美しく重なるビートルズ・ナンバー「Norwegian Wood」と続きます。そしてKatzmiさんの「せっかくこの雰囲気でふたりでやっているのだからインプロヴァイゼーションしよう。」と。………?となったのですが、なんでも音楽用語で即興演奏をこう呼ぶのだそうです。メモメモ。今日も色々と新たな知識を貰えるなぁ。知識と言えばKatzmiさんの「それでは即興のシャッフル・ブルースいきます!」と言う紹介の「シャッフル」って言葉も良く耳にするけれど、なんとなく雰囲気でこんな感じかなぁという理解でわかった顔していたのでちゃんと調べてみたら、♪タッタ、タッタ…という跳ねるようなリズムの事でした。KatzmiさんのシャッフルにJinさんもギターやブルースハープの音を絡めていくのですが、これ即興なんですよね?って思うほどのカッコ良さなのです。ミュージシャンってすごいなぁ‼︎と単純に敬意でいっぱいでした。それも阿吽の呼吸なのかアイコンタクトなのか、さらっとギターソロが入れ替わったりしちゃうから尚更びっくりです。師弟とは言えそれぞれ音色の違うギターソロが交互に飛び出し、聴いているだけでワクワクしてきます。アコギというとどうしてもコード弾いて伴奏する楽器とのイメージがあるのですが、このふたりのギターソロを聴いて、ソロはエレキのものではなく、アコギを電気使うように改良したものがエレキギターに過ぎないんだなぁと当たり前の事ながら気づいたほどです。



ブルージーな空気に包まれた後は、Katzmiさんのオリジナル曲「手をとりあって」。そしてJinさんの「90年代にも良い曲がたくさんあります」との紹介でヴォーカルを取ったT-BOLANの「離したくはない」は、オジサンはサビの部分であぁこの曲知ってる!とわかりました。Jinさんオリジナル曲も1曲セットインしたのですが、ふたりのユニットとしてこの先どんな合作曲が生まれてくるのかと思うと楽しみであります。その反面、Relation May色に染め直されたカヴァー曲ももっと聴きたいなと思わせてくれたのが続く「Englishman in New York」です。前半の「Imagine」同様に、単に原曲に忠実にカヴァーというのでないところがかっこ良くってすっかりノリノリです。開演前に身構えていたのはどこのどいつだ!?というくらいです。完全にふたりのミュージシャンの創り出す音世界に引きずり込まれています。そのままラストチューンでKatzmiさんのオリジナル曲「見果てぬ夢」へ。初めて聴いた曲なのですがキャッチーなナンバーで、途中から一緒に歌えてしまいましたし、コール&レスポンスまであり盛り上がりました。



アンコールはこのお店のマスターが大ファンだという事で、故ローウェル・ジョージが書いたリトル・フィートのナンバー「Willin'」です。哀愁を帯びたトラッカーの恋心を歌った曲で、久しぶりに聴いたので懐かしいやら嬉しいやらで一緒に口ずさみながら聴いちゃいました。終わって人一倍大きな拍手をしていたらKatzmiさんが「何?もう1曲聴きたい?」と、ポカーンとするJinさんを横目に歌い始めた「Happy Birthday To You」、そう今日はまさにJinさんの誕生日なのです。お客さんも隠し持っていたクラッカー鳴らして祝う中キャンドルの灯ったバースデーケーキが運ばれて来て、それは1週間前に誕生日を迎えられたKatzmiさんとふたり分のプレートが飾られており、キャンドルを吹き消したJinさん慌ててライターでキャンドル再点火してKatzmiさんが吹き消すというドタバタも。それぞれ締めの挨拶をしてRelation Mayの公式ファースト・ライヴは終了です。



ひとまわり年齢差の師弟ユニットってどういう感じかなぁと思っていましたが、もちろんそこにはお互いの敬意が見え隠れするのですが、楽器を手にしてしまえば音を創り上げていくという信頼の置ける仲間であり、ふたりのギターキッズでありました。そしてきっとリハーサルを何度何度も繰り返してではなく、その場のノリや雰囲気で合わせてしまうのだろうから、ただただミュージシャンって本当にすごいなぁという敬意と羨望しかありません。ライヴに行ってこんな思いを感じたのは初めてかもしれませんが、中学生だった頃にコードFの人差し指が押さえきれずに投げ出してしまったギター、ちゃんと続けていればこうやって音でコミュニケーションできたのになぁとひそかに思った夜でした。
  

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2018.4.18 タマ伸也@新大久保・沖縄島唄カーニバル

2018年04月18日 / ザ・ツイスターズ/ タマ伸也

2018.4.18 タマ伸也 ネバーエンディングライブ 新大久保@沖縄島唄カーニバル



ソロアーティストとしてだけではなくTHE TWISTARS、ポカスカジャン、THE 肯定'sの一員として、加えてお笑いにラジオのDJとマルチな活動を続けるタマちゃんことタマ伸也さん。そのタマちゃんが先月「4月から毎月10本ライヴをします!」とブログで宣言して世間を震撼させたのですが、その終わることのないツアー、題して「ネバーエンディングライブ」の皮切りが大好きな会場、新大久保の沖縄島唄カーニバルで開催されるという事で行ってきました。考えたらTHE TWISTARSやジョイントライヴではおなじみのタマちゃんなのですが、自分にとってソロでのワンマンは今回が初体験。楽しむ気満々で開演を待ちました。



気負うこともなくひょっこりとステージに登場したタマちゃん。まずは挨拶代わりにキラー・チューン「オー・マイ・ギター」でスタートです。集まったお客さんも慣れたもので、特に言われるでも指示されるでもなく「すぃんやっ‼︎」の合いの手を入れます。始まって数秒ですでにガッツリとした一体感で、これは今夜のライヴは盛り上がるよーという雰囲気が伝わってきました。続く「EASY HELLO」という横文字タイトルの曲だと言うので、どんな曲なのかなぁと聴いていたら、easy hello…イージー・ハロー…あっ!「意地はろう」か!ここらへんの言葉遊びも、タマちゃんの真骨頂であります。楽しく面白い中にも実は深い歌詞の内容だったりするので、たとえ手拍子しながらでもじっくり聴いてしまいます。



ここからは青森出身のタマちゃんだからなのか、恐山のイタコの口寄せの如く偉大なるミュージシャンや偉人の中にタマちゃんが憑依して、その人の新曲を勝手に作ってしまうという前代未聞の作品集「入りますシリーズ」です。決してパクるのではなく、タマちゃんからの愛の溢れたオマージュなのです。まずはジョン・レノンの新曲「LOVE & PEACE FROM 軽井沢」。この曲をライヴで聴くのは数回目なのですが、ネタや笑いなのではなくタマちゃんがジョン大好きな気持ちで溢れた曲だとその度に思うのです。



今日から始まったネバーエンディングライブでは毎回新曲を用意したいと語るタマちゃんが今宵作って来た新曲は、ライヴ会場が沖縄音楽中心のライヴハウスという事もあり、古い沖縄民謡などに見られる表記でおなじみの「作者不詳」に入って作った曲だと…。この人なに言ってんだ!?と正直爆笑しちゃいましたが、そのタマちゃんが書いてきた「作者不詳」さんの書いた新曲「ゲレンの歌」が不意打ち食らったかのような良い曲でビックリ!お客さんも全員が「あり!」の判定です。きっと雲の上で作者不詳先生も喜んでいらっしゃるはずです。



まだまだ出たり入ったりして書いた曲が続きます。次は玉置浩二さんに入って書いた「メロディが終わったあとに」。もうタイトルからして「大あり」でしょう、これは。続いては「入りますシリーズ」でこの人に入って欲しいというリクエストが…と書いていながらなに言っているんだ自分!と思うのですが…リクエストが一番多かったアーティスト、忌野清志郎さんに入ってできた「ガッタガッタフィーリング」です。決しておなじみのよく出てくる歌詞をありそうな曲調に乗せるだけではなく、この人が今曲を書くとしたら何に注目しどういう言葉で表現するのだろうという観点での作品で、聴く側もそれが理解できるとニンマリしてしまうのです。ファーストステージの最後はオリジナル、あ入りますシリーズもオリジナルっちゃオリジナルなのですけどね。本人曰く「タマ伸也に入って書いた曲」で、住んでいる浅草の街を歌った「花火の見える街」です。縁台や打水などが浮かぶ素敵な曲でした。



休憩を挟んでのセカンドステージは愛するパートナーとの終わりを歌った曲というので、てっきり切ない曲なのかと思っていたら何とも陽気に始まった上にタイトルが「あー、十個」。もう完全にタマちゃんのペースに振り回されている感じです。このタイトル「出て行く前にせめて俺の良いところを10個言ってくれ!」というとこからきていて、ここでまさかの「はい、ではお客さん1人ずつ僕の良いところをひとつずつ言って下さい!」という無茶振りが。「電話」と「咄嗟」に弱い自分はあたふたしちゃいました。最後はタマちゃんがオチをイジってきれいにまとめてくれました。続いて7年前の東日本大震災の時に東北の友達に物資を送ったところ、道路が通れなかったりで何日かかかると言われ覚悟していたら翌日には届いたと連絡を受けた時の感謝の気持ちを歌ったという「ハンド・トゥー・ハンド」で、コーラスは初めてでもすぐ覚えられて、周りのお客さんと手を繋いでの大合唱です。繋がるって温かいことなんだなぁとやたらと響きました。



冒頭で触れたようにマルチな活動をするタマちゃんですが、ソロでは珍しく他の活動の曲をやろうという嬉しい企画のコーナーが。まずは我らがTHE TWISTARSのナンバーで基本うわぁーっと勢いのあるライヴをするお祭りバンドなので、スローな曲はなかなかやる機会が無いということでアルバム「ラストサバニ」に収録されている「別れえぬ道」が飛び出しました。若い頃に書いた曲という事で改めて一緒に口ずさみながらも歌詞の若さを感じました。続いては精神科医でもある星野概念さんとのユニットTHE 肯定'sのナンバーで「自分のために」です。星野さんの歌詞は介護や日々の生活で疲弊してしまっている人に向けて、まずは自分に優しくしてあげて、それが周りの人をも笑顔にするのだからという内容がわかりやすくまっすぐと伝わってくる言葉で綴られていました。これも良い曲だったなぁ。そしてソロの曲に戻り、故郷の味を歌った「筋子の握りまんま」。青森のソウル・フードである筋子のおにぎりを軸に故郷の、幼い日々の情景を歌います。聴いている方も自分の思い出に重ねて己のソウル・フードを思い浮かべてみてしまう曲でした。



ここからは再びタマちゃん、入ります。まずは今上天皇に入って書いた「悩み多き日々」です。ことによっては不謹慎だと問題作となる内容ですが、自分はこの曲好きです。皇室がかえって身近に感じられる素敵な歌詞です。最後は70年代から活動のブルースバンド、憂歌団の木村充揮さんに入ってしまうと言う大胆さで生み出した「破れかぶれの人生」です。抑えていながらも時々木村さんの歌い方まで顔を出してしまうのですが、こうれはもう憂歌団のカヴァーと言われたら信じてしまうくらいのものでした。



ライヴ中にギター弾きながら親指が思い切り攣ってしまったタマちゃんにお客さんの方が気を遣って、今日はアンコールじゃなく指を休めてよと言った気持ちで控えていたら、当のタマちゃんが煽ってきました。それならば遠慮なくあと1曲楽しませてもらいましょう。選ばれた曲は中島らもさんの「いいんだぜ 」です。この曲カヴァーする人の気持ち、なんというか「覚悟」みたいな思いが込められていないと薄っぺらい言葉の列挙になってしまうのですが、タマちゃんの歌には受け止める包容力がありました。そうなると逆に「差別的な言葉」と言われているものもただの「言葉」になったようにさえ感じられたほどです。



こうして終了したライヴはタマちゃんの持つエンターティナーとしての魅力が思う存分に詰まったものでした。ただ歌がうまいとか、楽しい面白いという事だけではなく、頭の回転の速さで流れをコントロールしながらも自分のペースに引き込んでいく腕と天分によるもので、こちら側もそれに心地よく乗ることを楽しんでしまうことができるのです。そしてもう一つ大きいのはタマちゃんは常にその時間に全力投球してくれるから楽しめるのです。ライヴの回数が増えていけば必然的にマウンドに上がる回数も増えてくるのですが、それでもこのピッチャーは毎試合常に全力で投げ込んでくる事でしょう。体力勝負のところもあるでしょうから、マウンド降りたらしっかりと肩を休めて欲しいなぁ。まだ長いシーズンが開幕したばかりなのですからね。
  

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2018.4.14 Ed Sheeran@日本武道館

2018年04月14日 / 洋楽

2018.4.14 Ed Sheeran@日本武道館



自分が行く洋楽のコンサートと言えば、30年以上好きなミュージシャンとか、再結成して20年ぶりの来日と言った類のものばかりですが、今夜は旬のアーティストです。その上告白すると、自分は名前やヒット曲は薄っすら知っていた程度で、昨年初めにリリースされたシングル「Castle on the Hill」を試しに聴いてみたらどハマりして、アルバム「÷」がヘヴィロテ盤になり、後追いでそれまでの作品を聴いたニワカもんなのです。その頃に来日公演が発表され、ちゃっかりチケット抽選にも当たったものの、当初の予定が自転車事故での骨折で延期になり、ようやくこの日を迎えたのです。通いなれた武道館にワクワク入ると親子連れを含めて幅広い年齢層の聴衆で超満員でした。ステージ背後の大きなヴィジョンと上部に下がった4枚にすでに「÷」ロゴが映し出されていて、さらに期待は高まります。



開演時間ちょうどに客電が落ちると同時に総立ちの場内。みんなこの時を心待ちにしていたのですもんね。アコギ1本を提げたエドが飄々とステージに登場するともう割れんばかりの歓声で、それに笑顔で応えてスタートです。エドのステージはループ・ペダルを駆使してギター、ギターのボディーを叩くパーカッションパート、さらにコーラスまでその場で多重録音し再生して音を重ねていき、たったひとりで重厚感のある音を作り上げていくのですが、オープニングのイントロからその工程にわかっていてもスゲーっ!となった上、その曲が「Castle on the Hill」だったものですからもう体内のアドレナリンが走り回りだしました。いやぁーホントいい曲!ヴィジョンには車から見える流れる景色が映し出されて半端ない歌詞とのシンクロです。すでにお客さんも一緒に歌っていてなんとも武道館がライヴハウスになったかのような心地よさです。



2曲目は「÷」の冒頭の曲「Eraser」。ラップ部分はルーパーから流れる音に乗せて、マイクを手に動き回っての熱演です。現在は各国をスタジアムツアーで周っているだけに、アリーナクラスの会場でこのライヴを体験できている自分たちは幸せ者です。



「また東京に戻ることができて嬉しいよ!でも悲しい事に今夜が最後なんだよね。次の曲もみんな歌詞を知っていたら一緒に歌ってね!」と言うトークから始まったのはファーストアルバム収録の大ヒット曲「The A Team」。もちろんこれは歌えますって!



セカンドアルバム「×」からの「Don't 」と「÷」収録の「New Man」の2曲をオシャレにマッシュアップで披露して「Dive」へ。途中何度もこの音すべてひとりで作り上げているんだよなぁと思い出したように感心しちゃいました。ギターの音はもちろん、コーラスも当たり前の事ですが本人の声なのですからきれいに重なって場内に響き渡るのです。



多くを語る訳でもなく次々と曲が繰り出されるのですが、曲を通してコミュニケーションはバッチリで、勝手な思い込みかもしれないのですが全員参加型の一体感を感じるのです。そんな中「次の曲はみんな手を挙げて!そう!それを上下に振って!うん、いい感じだよ!」と始まったのは「Bloodstream」。CDではまぁ良い曲だなぁくらいだったのですが、コンサートでの高揚感が加わるのもあるのですがライヴで聴くとめちゃめちゃ深く深く響いてきました。特に中盤部のコーラスを重ねていき、最後にそれに乗せて高いパートを熱唱するところの美しさには思わずため息出てしまった程でした。



そして爪弾くようなこのイントロは…「÷」の中でも大好きな曲「Happier」です。彼の曲はそのメロディの美しさが自分にとって最大の魅力なのですが、この曲はまさにその代表のような曲です。そのメロディに乗せて別れた彼女が別の男と歩いているのを見て、その笑顔が僕といた時よりも幸せそうだったという切ない歌詞を歌い上げるのですからたまりません。うっとりと聴き惚れてしまいました。曲が終わったあと横の妻が「こんなにきれいな曲を書いてもらえるなら、エドと別れてみたい!」と漏らしたのが忘れられません。前半のハイライト的な1曲でした。



次はセカンドアルバム「×」のツアーのオープニングチューンだった「I'm a Mess」です。この曲も中盤の重ねたコーラスにお客さんの歌と手拍子が入り一緒に作り上げていく感じがなんとも楽しい展開です。ヴィジョンに映し出される映像も、単に生中継のものだけではなく、それに用意されている映像がプラスされて視覚的にも楽しませてくれています。



ここでEd's choiceと呼ばれているその日によって曲が変わるコーナーです。自分としては「÷」の中の「Supermarket Flowers」を期待していたのですが今宵選ばれたのは「×」に収録されている「Tenerife Sea」でした。やはり願った通りにはいかないよなぁと思っていたら、まぁこの曲が素晴らしかったこと!切々と歌われるラヴソングなのですが、これまたコーラスの"Lumiere, darling, Lumiere over me"部分が重ねられて、それがなんとも美しくて雲の隙間から光が差し込んできているかのようでした。



フィドルの音をアコギで奏でて始まったのは、シーラン家がアイリッシュ系である事を感じさせる「Galway Girl」です。できるものならリバーダンスのステップを踏みたくなるようなノリの良さです。



続いてはニーナ・シモンのヒット曲、そして最近ではマイケル・ブーブレがヒットさせた「Feeling Good」のカヴァーを導入部として、そこからメドレーのように「 I See Fire」へと繋がっていきました。この曲も「Bloodstream」同様にライヴでの方がCDなどで聴くよりずっと重厚さがあり素晴らかったです。



ここでまた予想外のマッシュアップの登場です。あとから調べてみても前のアルバムのツアーでは定番だったものの、昨年から130回以上世界中で行われている今回の「÷」ツアーでは今夜が初めてのセットインだったのですが、同じアルバム「×」から「One」を導入部として、待ってました!大好きな「Photograph」へと繋げたのです。その驚きもさることながら「Photograph」の素晴らしさにはもう言葉もありません。スマホのライトが武道館いっぱいに満天の星空のように広がり、大合唱も加わりこれこそライヴの醍醐味という相乗効果でさらに曲の魅力を増していました。



その余韻の中続いた「Perfect」もしっとりとした美しい曲なので、「One」からのこの3曲が一連の流れであるかのようで大満足でした。



ここからはラストスパートと言った感じで、まずはこれまたアイリッシュ・フレーヴァー溢れる曲調に乗せエドの祖父母の出会いの物語を歌った「Nancy Mulligan」です。陽気でダンサブルな曲調ながら、同じ島で生まれながらも祖父は北アイルランドのプロテスタント、祖母ナンシーはアイルランド南部のカトリック。このふたりが出会い、恋に落ち、家族の猛反対にもかかわらず結ばれたという内容で、まるで焚火を囲んでみんなで歌い踊り、エドの祖父母の門出を祝福しているかのような場内の雰囲気です。



そしてその焚火の火がおちてふたりはスローダンスを踊り始めたような流れでの「Thinking Out Loud」では、再び場内がスマホのライトの星でいっぱいになり、ヴィジョンには星の下で永遠の想いを伝えるカップルのスケッチがストーリーを織り成していきます。もう素敵過ぎます。シンプルなラヴソングなのですが、それで充分です。ラヴストーリーを複雑にしちゃうのは自分たちなのですからね。そんな純粋な気持ちにさせてくれた武道館が正に"Maybe we found love right where we are" (僕たちきっとここで愛を見つけたんだ)というサビの歌詞の"where we are"になったのではないでしょうか。還暦間近のオジサンが「70になっても今と同じように愛しているよ」って言う歌詞にキュンキュンしたところでそんなに先の事ではないのですが、そんなオジサンさえもロマンティックな気分にさせてしまったのですから、ヴィジョンに描かれた星と場内に煌めいたスマホライトはエドの放った魔法の粉だったのかもしれません。(これ、きっと後から読んで小っ恥ずかしくなるんだろうなぁ…)



ラストはまずリズムを作ってから「さぁみんな!この曲はみんなに参加して欲しいんだ!」と、コール&レスポンスからコーラス部分の練習をしてから「Sing」へ。オオオオーオオオ オオオオー!を繰り返すコーラスなので歌詞もへったくれもなく全員参加の大合唱です。よくライヴで観客が一緒に歌うことに賛否両論ありますが、こういう参加型のコンサートで文句を言っている人がいたらそれはお門違いってもんでしょう。ミュージシャンのパフォーマンスだけでなく、演出、そして聴衆の作りだす雰囲気まで含めての全体像がコンサートだと思うのです。それぞれ好みが違うのは認めますが、入り込んだもん、楽しんだもん勝ちですからね。



そのままオオオオーオオオ…のコーラスを繰り返し続けさせて、その声がアンコール代わりでステージから掃けたエドが戻ってきた時にはサッカー日本代表のユニフォーム姿で、背中には生まれた年の91とSHEERANのマーキングです。そして横に置かれたシンセサイザーが叩き出すマリンバ風の音が大歓声を誘発します。そうです、昨年の大ヒット曲「Shape of You」です。正直言って自分はこの曲の魅力がさっぱりわからないのですが、やはり生でも変わらなかったです。ただアンコールの勢いで盛り上がっちゃいましたがね。



「もう1曲やろうか!」の声と共に同じく自分にはさっぱりなのだけど盛り上がってしまった「You Need Me, I Don't Need You」です。エドはギターの弦を切る熱演で、高速ラップも入るこの曲はよくこんなエネルギーが最後に残っていたなぁと思わせる程です。途中日の丸の旗が渡されてそれを振りながら縦横無尽にセットを動き回り、ステージ前方に客席を背に旗を広げて観客との記念撮影まで飛び出しました。インスタ世代の若者です。「ありがとう東京!また来年には戻ってくるよ!」という挨拶と共に100分のライヴは終幕です。



今をときめく人気アーティストなだけに勢い中心みたいなものがあるのかなと思って臨んだ今夜のライヴですが、この27歳のスーパースターはしっかりと地に足がついている人でした。機材や演出を駆使してたったひとりのステージをこれだけハイクォリティな時間に仕上げているのはもちろんすごいことなのですが、それ以上に根底にあるのは「曲」の良さなのだと改めて思いました。もしこのセットを小さなライヴハウスで簡単な照明のステージでやったとしても、同じように感銘を受けた事でしょう。そしてかねがねライヴはアーティストと聴衆で共に作り上げる時間だと思っている自分にとって、その思いを立証するかのようなコンサートでした。



=setlist=
Castle on the Hill
Eraser
The A Team
Don't / New Man
Dive
Bloodstream
Happier
I'm a Mess
Tenerife Sea
Galway Girl
Feeling Good / I See Fire
One / Photograph
Perfect
Nancy Mulligan
Thinking Out Loud
Sing
-Encore-
Shape of You
You Need Me, I Don't Need You


  

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2018.4.8 ◎ターシ@bar YaYa ebisu

2018年04月08日 / ◎ターシ

2018.4.8 ◎ターシ このうえないLIVE!東京@bar YaYa ebisu



昨年11月に◎ターシさんの歌声に出会い一”耳”惚れし、年末に初めてソロのライヴを聴かせてもらい、まだ5カ月目なのにもう3回目のライヴです。まるで同じ町内に住んでいらっしゃるかのような頻度ですが、ムーミンのスナフキンのようにギター片手に旅を続けていらっしゃるとは言え、本拠地は沖縄県那覇市。頻度もさることながら通ってしまう自分も一耳惚れがマジ恋になっているようです。今回は日曜の夜。いつも仕事帰りに集まる◎ターシマニアのみなさんも、もうすでに飲んできたりしていていつにも増してまったりとした大人の雰囲気の店内です。



あらかたお客さんも揃ったかなという頃合いで第一部のスタートです。自分自身まだ3回目ですし、持っているCDも與那嶺商会としての2枚だけなので知っている曲が少ない事もあるのですが、自分にとって◎ターシさんのライヴは何を演ったかということよりもトータルの雰囲気、空気、あたたかさ、楽しさが最大の魅力なのです。それでも曲紹介を聞き取ったメモや知っている曲だけ挙げて進めていきますとオープニングからの3曲は「月灯りと君とヨット」「あかばなー」を含むセットで、大体いつもはこの中の1曲を選んで頭の方で歌うのですが、今夜はその3曲を繋げてみましたとの事でした。もうこの3曲で2ヵ月ぶりの◎ターシさんの世界にどっぷりと浸かってしまいました。



最近アメリカで銃規制に向けて立ち上がった高校生の姿に久しぶりの感動を覚えたという話から、今日は想いを込めて唄いますと歌われた「細い三日月と満天の星」は、70年代の映画「いちご白書」を思い起こさせるような青春時代のいろいろな感情が入り混じったような曲で、先ほどの話からの選曲に妙に納得がゆくものがありました。



◎ターシさんは自分と同年代なのでカヴァーされる洋楽曲もドンピシャとツボを突いてくるのですが、今宵取り上げた3曲もどれもバキューンでした。まず第1部に歌われたのはエリック・クラプトンの超名盤「スローハンド」に収められいる「Wonderful Tonight」。名曲というだけでなく◎ターシさんのクリアーな声がスポっとハマりもうたまりません!



オリジナル曲も青春の甘酸っぱい恋心が痛いほど溢れている「約束」「アルバム」とバラード系の曲が続きます。日曜の夜らしくじっくりと聴く曲が並びなんとも良い感じです。楽しいトークを挟み「では1部最後の曲です。」と始まったイントロは僕の大好きな曲「じゅーしぃ食べたらいいさぁ」で、心でやったぁ!とガッツポーズしたのですが、歌が始まる直前で止まり「って1部の最後にこの曲は合わないねぇ」と寸止め。うーん、確かに。替わって歌われたのはこれまたライヴで聴くのを楽しみにしている曲「花鳥風水」だったので文句なしです。



短い休憩を挟みセカンドステージの始まりは「桜、葉桜、世に舞う桜」。今の時季にぴったりの曲で、今夜は最後にこの曲なんだろうと思っていたのでちょっとびっくりでした。そして札幌をテーマにした「SPK」、ドンピシャ洋楽カヴァー2曲目でシンディー・ローパーの「Time After Time」、「センチメンタル」なんとかと紹介された曲と切ない感じの曲が続き「◎ターシのサンデー・バラード・ナイト、お届けしております」と、いつのまにかうっとりと聴き惚れるオトナな夜になっていました。



ここで一転してアップテンポな昭和のフォークソング調の曲「想い出は風の中に」と、同じテンポで明るい響きながら深い曲「パスポートもって」と続きます。この曲は60年代から70年年代にかけての、アメリカの統治下の沖縄で育った少年の気持ちが表れていて、自分の中では音楽で沖縄の流れを感じる上でとても大切な曲となっています。



そして、あれ?このイントロのコード進行ってもしや?と思ってみたものの、いやいやまさかねぇと打ち消してみたのですが、やはり当たっていたのがドンピシャ洋楽カヴァーの3曲目。ドンピシャどころか◎ターシさんにこれ歌われたら泣くでしょう!と言っても過言ではないジャーニーの「Don't Stop Believin'」だったのです!まさかここで、アコギ1本でこの声で聴かれるとは!思わずフルコーラス一緒に口ずさんでしまいました。シンガー・ソングライターの方のライヴでカヴァー曲をベタ褒めするのもどうかですが、今夜一番の大興奮でした。自分だけでなく場内みんな盛り上がってきたところでそのまま「ふくぎ」「僕と空の間」とノリの良い曲でラストスパート。爽快感に包まれたままラストを迎えました。



アンコールでもう1曲。サンデー・バラード・ナイトの最後らしく、しっとりとした「いつも君がそばにいて」です。この曲も歌詞が切ない良い曲です。妄想で歌詞を書くと話されていましたが、時々自分の抱いている感情や想いを見透かされているような部分がありドキッとするのは、ここまでの道程は違っても同じくらい生きてきているからなのかもしれません。



定期的なライヴで自分にとっては3回目だったのですが、サンデー・バラード・ナイトは過去の2回とはまた違った充足感のようなものがありました。特にこの場所でのライヴはお客さんもお店の雰囲気も「音楽を聴く」ための場を作っていて、騒ぐ事もなく音を受け止めているので、きっと◎ターシさん自身も気持ちよくライヴをできるのではないでしょうか。好きな曲、聴きたい曲はたくさんあるのですが、毎回こんな曲もあるんだよ、こんな面もあるんだよと聴かせてくれる事が、冒頭に書いた「何を演ったか」は大きな問題ではないという事なのだと思います。そして何を演ってもそこに◎ターシさんの歌声とギター、そして止まらないトークがあればそれで満足なのです。2ヵ月に一度、こんな風に音に身を委ねられる時間を持てることがとても嬉しいし、自分の日々の生活になくてはならない時間になっているとさえ感じた今宵のサンデー・ナイト・ライヴでした。
  

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2018.4.8 よなは徹@Live&Pub Shibuya gee-ge.

2018年04月08日 / よなは徹

2018.4.8 よなは徹 たったひとり歌会 vol.56 (昼公演)@Live&Pub Shibuya gee-ge.



いつも多くの抽斗を開いて様々な音を聴かせてくれる徹さんのライヴ。今回は渋谷のライヴハウスでの公演です。日曜の昼下がり、公園通りの雑踏を抜けて辿り着いた会場は、それまでの喧噪の世界からまるで異次元にワープしたような時空が待っていました。



ステージに1つ置かれたスツールに草色の紋付に袴姿の徹さんが腰かけ、ぴんと伸ばした背筋の見ている方すら気持ち良くなる姿勢で奏で始めた三線の調べは「あがいてぃーだ」という新曲だそう。この調べ(あぁ「調べ」ってその響きも含めて良い言葉だなぁ)がまるで琴のように響き、後からタイトルを聞いたのですが「昇る太陽」という意味がぴったりとくる曲調でした。そして古典曲「稲まづん(いにまじん)節」が続き、品格のある上質な時の流れが場内の時計の進む速度をゆったりとしたものに変えていきました。



ここから聞き取ってメモしたタイトルなので怪しいのですが、薩摩侵攻の際に時の尚寧王が人質に取られた事を隠すために歌われたという「世栄節」、そして首里の大奥の正室が若い側室を花に例えてその若さを羨んだという「辺野喜(びぬち)節」と続いた2曲が不思議だったのです。イントロがまったく同じ。それもこれ、おなじみの「かぎやで風」のイントロじゃんという謎。もう似ているなどというレベルではなく、イントロクイズで流れたらお手付き必至な同じさだったのです。徹さんのライヴは毎回「なんでだろう」「どういうことだろう」といくつも調べたい知識欲が湧いてくるのですが、できる事なら「徹先生、質問!」と手を挙げてその場でこの定番イントロについて尋ねたかったのです。でもどう考えてもライヴの流れを途切れさせてしまうと思い断念しました。古典の世界も奥深くて面白いなぁ。



このイントロクイズ引っ掛け問題の2曲は古典の中でも短い1分ほどの曲だったのですが、次は約10分にも及ぶ「伊野波(ぬふぁ)節」でしたが、ゆったりとした調べは眠くなるどころか浮遊感さえ感じる心地よさに包まれました。ただ古典ライヴの前に昼食を済ませるのに際し、炭水化物は控えて血糖値の上昇を抑えておいて良かったとは思いました。そして1部のラストは徹さんのライヴで何回か演奏された、イケメン少年中城若松くんとそれを取り巻く痛い女性の話という組踊「執心鐘入」の中で歌われる「干瀬(ふぃし)節」で締められ休憩に。古典舞台の演目をドロドロ系ドラマと重ねて考えたら偉い人に怒られそうですが、以前見たドラマでストーリーがピークに達すると流れるシャ乱Qの「いいわけ」みたいなものだったのだろうななどと不埒な事を妄想をしちゃいました。



第二部は桜色の色紋付にお召し替えで登場し、古典を離れて徹さんの師匠の師匠にあたる津波恒徳さんの2曲「くがなー」「親子鷹」で幕開けです。鉄板ネタの「良い曲を書く人はなぜか性格悪い人が多いのですが恒徳さんは本当に性格良い人なんです。」という話で挙げられた良い曲を書く人たちの名前に思わずニヤッとしちゃいました。書けませんけどね。そして数あるナークニーの中から「富原宮古根(とぅんばるなーくにー)」。この曲の富原はずっと地名だと思っていたのですが、作られた富原盛勇さんのお名前だという事を初めて知りました。ちょうど来週、コザで10回目の「てるりん祭」が開催されるそうで、今年も徹さんは前川守賢さんと組んでワタブーショーを再現されるというお話から、照屋林助さんの「うとぅるさむん」を聴かせてくれたのですが、この曲は歌詞が方言ではないので自分にも理解でき、「怖いもの見たさ」を意味するタイトルのこの曲は給料日にちょっとだけ飲んで帰ろうと思ったら、飲み屋で気が大きくなって周りに奢ってしまい、空の月給袋を持って朝帰りするダメ父ちゃんのストーリーで、今の時代に聴いても漫談のようで面白いのだから、娯楽の少なかった時代に大ヒットの舞台を続けていたことが良くわかりました。



ここで「歌遊び」をしましょうと始まった「口説」。この「くどぅち」と言う言葉も良く耳にするのですが、一定の三線のリズムに乗って七五調の歌詞やセリフを入れていく、いわゆる今で言うところのラップミュージックなのだそうです。かなりセンスや技術を要する遊びだったのだなぁ。その中に織り込まれた「職業口説」は言葉もなんとなく理解できて大笑いしちゃいました。そして先人たちはこのリズムに乗って「黒田節」を歌ったりもしたそうで、徹さんもこれを現代風にやってみようと乗せはじめたのが松山千春さんの「大空と大地の中で」で度胆を抜かれたのですが、見た目似ているとかだけではなくて、はっと気づいたらこの曲の歌詞「果てしない 大空と 広い大地の その中で」も考えてみれば七五調なのですね。それにしても歌のメロディーと全然違う旋律とリズムを繰り返し弾きながらの口説は、遊びと呼ぶには高度すぎるものでした。



ライヴも終盤となり数少ない裏声を使う曲という紹介でスタートしたのが、徹さんの速度違反な速弾きが飛ばし捲くる「多幸山」です。カチャーシーの定番曲のひとつなのですが、もう指の動きに見入ってしまいそれどころではなかったのです。曲が終わった時に思わず息を止めて凝視していた自分に気付いたほどです。「ここで唐船どーいで終わりだと思っているでしょ」という、多分誰しもがそう思っていたところを突かれ、その裏をかくかのように最後は登川誠仁さんのおなじみのナンバー「油断しるな」で締められました。なんだか全体を通してはゆったりとした今日のライヴのエンディングにはむしろこれでよかったなぁとさえ感じましたし、先月御命日だった誠小先生もきっと喜んでいらしたのではないかな。そしてアンコールに応えてステージに戻って来てくれ、久米島のとても旋律が美しい曲ですという紹介で演奏された舞踊曲「仲里節」は本当にきれいなメロディーラインの曲でした。その時に徹さんが話されていた舞踊界の流派縛りの話が印象的でした。もちろん作者の権利などは大切なことですが、生み出した作品が多くの人に愛され広まった方が自分ならば嬉しいのになぁって思うのです。護得久先生の「沖縄には著作権はないよ!」の名言は大きな意味ではアンチテーゼなのかもしれませんね。多分違うでしょうが。



こうして昼公演でおこなわれた「たったひとり歌会」は幕を閉じました。自分としては休日の昼のライヴ、思ってもみなかった特別感があり、仕事上がりに駆けつけるとかではなくフル充電の態勢でゆったりとした時間と音楽に身を委ねることができ、なんとも心地よい体験でした。そして今回も徹さんは新たな抽斗を開いて覗かせてくれ、以前に開いた抽斗からは更にファイルを取り出して資料を見せてくれた感があります。なおかつ興味津々な自由研究の課題まで与えてくれました。かといって小難しい古典音楽教室や芸術鑑賞会でもなくあくまでもライヴでありギグなのです。ゆったりと過ごしたライヴハウスから清々しい気分で出て公園通りの雑踏に再び呑みこまれても、しばらくはその気分は失せる事がありませんでした。
  

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2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

2018年03月11日 / 石垣喜幸

2018.3.11 石垣 喜幸『みんなの歌がこだまする』@石巻・旧観慶丸商店



もーちゃんこと石垣喜幸さんが宮城でライヴをする!それも東日本大震災から7年目の3月11日に!数ヶ月前にこの告知を見た時に「これは行かなきゃ!」とほぼ即決しました。ただ正直に告白すると、その即決した大きな要素となったのが会場です。調べてみたら旧観慶丸商店は80年前に建てられた元百貨店で、今は市の文化財として保存されているイベントも開催できる施設という事でアルコールNG。という事は酔って騒ぐ人も無く音楽に集中する事ができるのではないかという下心が働いたのです。



早々に予約を済ませたものの、その後徐々に「この3月11日という日に被災地で行われる地元の方々主体のライヴに、自分たちのような他所者が所詮オッカケで行ってしまっていいのかな?」という想いが去来してきました。そんな頃にまるでそれを見越したかのように主催者の方から予約完了のメールを頂き、御礼と共に自分の想いをありのままにお伝えする返信をしました。折り返し頂いたご丁寧なメールには、前に向かって歩いている石巻にぜひいらして、美味しい魚を食べてライヴを楽しんでくださいという自分の中のモヤモヤを晴らしてくださる様な言葉が綴れていました。もちろん辛く大変な経験をされた事は間違いないのですが、被災地だからと言って、言葉は悪いかもしれませんが腫れものに触るような接し方は違うのではないかと思うようになり、それならば短い時間でも石巻の町とライヴを楽しもうと決めたのです。震災翌年の5月にこの町を訪れた時は仙台からの仙石線は一部区間がまだバス代行となっていたのですが、今回は高台に新たに敷設された線路を一直線に石巻へ向かいました。6年ぶりに降り立った石巻は日曜の昼下がりの静けさに包まれていました。駅前にある市役所に献花場が設けれており、そこで2時46分を迎え黙祷。さぁ、ここからは楽しもうと海鮮丼を食べ、お土産を買い、会場に向かったのです。旧観慶丸商店は渋い佇まいの建物で、内部は鉄骨補強された木造で優しい音が聴こえそうです。会場を埋めたお客さんは年齢層も高く、はじめてもーちゃんの歌に接する方が多いようです。



開演時間を少し回った頃、サポートキーボードの高嶺史さんと共に現れたもーちゃん。ギターと鍵盤の音が優しく心地よく響き「ふわり ふわり...」と1曲目の「タイムトラベル」の歌声が余計な雑音のいっさいしない場内をまるで包み込むかのように届いてきました。ただただうっとりしちゃいました。MCを挟んで軽快な「都バス」、そしてこの日のために手作りで仕上げて来たというCD「あいのうた」に収録されている「中央線」と続くと、もうすっかり場内はもーちゃんの世界に引きずり込まれていました。



震災のあとこの町のラジオでデビュー曲「見上げれば」が流れていた事がきっかけとなり、よくライヴをしていた東京の沖縄料理店が炊き出しに行くのに同行し、石巻の仮説住宅の集会所などにこの歌を届けに来たというもーちゃん。「遠き故郷の優しい月明かり 思いは一つ 幸せを全ての人々へ 見上げれば空はある 見下ろせば海もある 悲しみは抱きしめて歩き出す 幼き命よ」この歌詞が今夜は特別なものとして響きます。



一部の最後は出会った人々の縁の大切さを歌った「結の風」です。今宵こうして自分がこの場所にいる事も全てこの「結(ゆい)」があっての事なんだよなぁと感謝する気持ちで聴き入りました。



休憩時間には、まだ前半しか終わっていないのに妻とふたり来て良かったねともう興奮状態で、その高揚を表の空気で一旦鎮めて後半に臨みました。赤いシャツに着替えて登場したもーちゃん、まずはしっとりと「悲しみのない世界」でスタートです。改めてこの人の大きな魅力である優しくなおかつ力強い説得力のある声に脱帽です。



そして同じく魅力である歌詞は気がつくとそっと寄り添っていてくれて、時には肩を抱きしめてくれるような包容力に溢れいます。そんな魅力全開の「10年」「光」とおなじみの曲が続き、うっとりモードに再突入です。ギターを置き高嶺さんの鍵盤に乗せ歌った「愛のうた」はさらにその魅力が凝縮されたかのような曲でした。



そして今夜どうしても聴きたかった曲「こだま」です。昨日行ったサッカーの試合が行われたスタジアムで、選手たちが並んで募金活動をしていたのですが、遠巻きにスマホで写真を撮るだけの人も多く、その時脳裏にはこの曲の歌詞の一部
深く大きな絆は いったい何処へ置き忘れたの
どんな時でも思いは一つ 未来に命を咲かせましょう
が流れてきました。
どこにいても大丈夫 あなたの側には私がいる
涙の降りそそぐこの世界に あなたの歌がこだまする
悲しみの降りそそぐこの世界に あなたの愛がこだまする
ライヴでいつ聴いても心がさざめき立つ曲なのですが、今宵はいつにも増して深く深く入ってきました。そしてこの曲の、音楽の持つチカラを痛感して震える思いでした。



余韻にぼーっとなっていると続いてはコーラスで全員参加型の「海へ行こう」でみんなを笑顔いっぱいにしてくれます。途中離島ネタや地元ネタも盛り込むもーちゃんの絶妙なトークとハッピーな曲調で、それまでおとなしい感じのお客さんも手拍子しながら一緒に歌っての盛り上がりとなりました。



あっという間に最後の曲となってしまいましたが、選ばれた曲はこれまたもーちゃんワールドに包み込まれる名曲「思い出に残るのは」です。
春も夏も秋も冬も 僕がそばにいてあげる
このフレーズ、なんて心強いのだろう。ありきたりのラヴソングとして聴いてしまえばそれまでの歌詞なのですが、この声で歌われるとものすごい安心感を感じるのです。別に何かに打ち拉がれている訳でもない呑気なおじさんの自分でさえそう感じるのですから、もし心が折れそうな時にこの曲を聴いたらものすごい支えになるはずです。



アンコールかなと思ったら、ここでお楽しみ抽選会タイム。チケットに記された番号で主催者の方の心のこもった手作りキャンドルや、高嶺さん、もーちゃんの持参したお土産が当たるのですが、持っている男なのかもーちゃんの持ってきた八重山焼きのお茶碗が当たっちゃいました。嬉しいやら申し訳ないやら。でもしっかりいただいてきました。



そしてアンコール。NHK東日本大震災プロジェクトのテーマ曲「花は咲く」です。自分はサビの部分くらいしか知らなかったのですが、会場のみなさんは頭から一緒に歌われており恥ずかしさすら感じました。この曲、もーちゃんの声にあっていたなぁ。場内大合唱も相まってなんとも心温まる時間でした。



こうして今夜のライヴは終了です。振り返ってみると「見上げれば」の曲紹介の時に震災の翌年石巻に来たと言うこと以外、特にこの日この場所を意識した話がある訳でも無く「慰霊」とか「被災」という言葉も無く進んでいったライヴでした。それでいながら、もーちゃんの歌と曲の持つチカラで特別な夜になっていたのです。今日に至るまで冒頭に書いたような心の葛藤があった自分は逆に驚かされました。そして逆に大きな事を学ぶ事ができた気がします。今夜会場に集まった方々はほとんどが地元の方で、大変な思いをされた事には違いないのですが、私たちが時々思い出したように「忘れない」とか「絆」とか言っているのはあくまでも他所の土地に住んでいるからなのであり、地元の方にしてみれば忘れるもなにもずっと継続している訳で、いつまでもこの街は「被災地」であるのではなく「故郷」であるのです。もーちゃんはこの地に励ましにやって来たのではなく、歌を届けに、想いを伝えに来たのです。歌でとなりに腰を下ろしてそっと肩を抱いて、笑顔を共有するために来たのです。「被災地で少しでも自分ができる事を」などと思った自分は、その思いを免罪符としつつもある意味線を引いていたのかもしれません。もーちゃんのライヴと、周りのお客さんの笑顔を見てそれを学ばせてもらいました。ライヴの素晴らしさはもちろんなのですが、その意味でも本当に「この日、この場所」に来れる事ができて良かったです。  

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2018.2.23 ◎ターシ@Bar YAYA Ebisu

2018年02月23日 / ◎ターシ

2018.2.23 ◎ターシ このうえないLIVE!@Bar YAYA Ebisu



「はいさいっ!」
金曜の夜、人々でごった返す恵比寿の街をコートの襟を立てて足早に歩き、雑居ビルのエレベーターを降りライヴ会場のバーのドアを開けると、笑顔の◎ターシさんがこの言葉で迎えてくれ、それだけで防寒着だけでなくいろいろなものを脱ぐことができる様な気分になります。昨年末に初めてこの場所で2ヶ月に一度の割で行われる◎ターシさんのライヴも今回が2回目。場所的に自分にとって仕事帰りにふらっと寄るのに便利だし、ちょうど良い感じのサイズの落ち着いた店内はバーという事もあって、酔って騒ぐ人もいないし、楽しみながらじっくりと音楽に集中できる、正に「このうえないLIVE」条件が揃っているのです。



お客さんも集まり「さ、そろそろ始めようかねー」という感じで開演です。オープニングナンバーはブルージーな「あかばなー」です。そしてスコーンと抜けるような「daydream」、やさしく寄り添ってくれる「じゅーしぃ食べたらいいさぁ」と◎ターシさんのバラエティ豊かな抽斗から出てくるコトバとメロディーで紡がれた曲が続きます。弾き語りライヴなので見た目の絵的にはずっと同じなのですが、曲毎に目に見える◎ターシさんの周りの光景が海だったり、街の雑踏だったり、青空だったり、夏の陽射しだったりと変化していくのを感じさせてくれるのは曲と歌のチカラなのでしょう。



「アルバム」などのオリジナル曲が続き、與那嶺商会としての2枚のCD収録曲しかわからない自分にとっては初めて耳にする曲も多いのです。これまでライヴといえば何度もレコードやCDで聴いた曲を何曲やってくれるかみたいなところがありましたが、こうして聴いたことない曲に生で出会っていくというのもそれはそれでアリだなぁ。



「オリジナル曲が続きましたが、ここらでみなさん耳馴染みある曲を」とカヴァー曲が2曲。先ずは83年に大ヒットしたシンディー・ローパーの「Time After Time」で、最後のところでギターの音が時を刻んでいるところがたまらなく素敵です。そして鈴木雅之さんのたしか最初のソロシングルだった「ガラス越しに消えた夏」が懐かしく響きました。ファーストステージの最後は「ふくぎ」という曲なのですが、曲紹介の時にフクギの実、花の話からそれを餌のするリュウキュウオオコウモリの話へと飛躍していき、どこまでいっちゃうのと笑いながらも感心しつつ聞いていたら、オオコウモリのカラダは猫ほどの大きさがあるという驚愕の事実を知ったところで曲が始まりました。



休憩と言ってもみんなトイレ行ったり、ひと通りドリンクのおかわりを注文して出揃うと後半の始まりです。いきなり「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。」という方丈記の一節を語り始めキョトンとしてしまったのですが、若い頃はまったく関心を示さなかったコトバでも年齢を経てあるタイミングで出会うとスーッと入ってくるという言い得て妙な話で、そんなことを歌詞にのせたいと書いたという「花鳥風水」をしっとりと聴かせてくれました。



これも初めましての「夏をモザイク」に続いて、開催中のオリンピックの話から1964年の東京五輪の聖火ランナーが又吉道路を首里に向けて走って行ったのを人垣の足の下をくぐって見たという歌詞もある「パスポートもって」。この曲も大好き。この時代の事が歌われた曲をあまり知らないだけに新鮮で、聴くたびにブラウン管に映る白黒画面と船の中の油の臭いが浮かんできます。



十代の頃にギターと曲作りを始めて、その頃はこんな曲を作っていたなどの話を演奏も入れつつ聞かせてくれ、昔風のタイトルですがと「想い出は風の中に」「いつも君がそばにいて」などのオリジナル曲が続きましたが、同年代だけにこれがスポッとツボに入ってくる歌詞と曲調なのです。そしてこれはどうしても歌いたいと陽水さんの「氷の世界」へ。自分にとっても初めてちゃんと聴いた「フォークソング」の部類に入る曲だけに、◎ターシさんの熱演にどんどん引き込まれていきました。またこの曲が声に合っているんだよなぁ。「もう時間なんでこの曲で終わりねー。アンコール無し!その分の気持ちも全部この曲に込めますね。」と選ばれたのはまだ数回しかライヴを聴いたことない自分でさえ、この曲は外せないよなぁと既に思っている「桜、葉桜、世に舞う桜」です。もちろんそれでもアンコールするような無粋な事はありません。



こうして肩に力入らず、身構えずに日常の生活の中に極上の音楽が入り込んでいるっていいなぁ。もちろん何週間も楽しみにしていたのですが、仕事と家庭の間にあるじっくりと好きな音楽に浸る時間はとても贅沢なものです。そして◎ターシさんのライヴは、歌もトークも含めて決して柔らかく優しい、楽しいだけではなく、現実を突きつけられたり考えさせられる部分も同様にあり、奥も底も深く響いてきます。それだけにその歌声に癒されるとか和ませてもらうなどの陳腐な表現では表せ切れない時間が流れていきます。見合う言葉を探してみるならば、聴いていて喜怒哀楽、上下前後左右、善悪正邪と様々な方向と次元にココロは押され引っ張られ揺れ動かされ、それによって最終的には「整え」られて笑顔になる、そんな感じの時間です。疲弊したり張り詰めたところはほぐされ、能天気な部分は戒めてもらい、浮かれている部分は落ちつかせてもらうという整え方です。こうして今夜も整えられた自分は来た時よりもちょっとポカポカして外に出て、コートの襟は立てずに家路に就きました。

  

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2018.2.9 THE TWISTARS@吉祥寺 ROCK JOINT GB

2018年02月09日 / 川畑アキラ/ 川畑兄弟/ ザ・ツイスターズ/ タマ伸也/ 相馬圭二

2018.2.9 THE TWISTARS in "Invitation to the Blues at February 2018~part 2~"@吉祥寺 ROCK JOINT GB



お月様が幾度となく満ち欠けを繰り返し、落葉樹の葉が色づき散って土に還り、新たな芽吹きを待つこの季節、一年ぶりの祭りを司るために男衆は再び集いました。



年に一度だけ集まって活動するバンド、THE TWISTARS。もちろんファンとしてはもっと活動をして欲しいと言う思いはあるものの、こうして継続してくれる事が何よりも嬉しいのです。解散しちゃったらそれでおしまいだし、もちろんミュージシャンも人間ですから、感情の行き違いや生活の変化によって活動状況が変わる事は致し方ないことなのですが、バンドやユニットが解散した時点でファンは否応無しにその場に置き去りになるのです。そういった意味でたとえ機会は少なくても次を楽しみに待っていられるだけで充分なのです。



今年の祭りは短期間に関東エリアのみで数回の開催で、その初日は吉祥寺のライヴハウスでの対バン・イヴェントです。会場に着いた時はオープニングアクトの若いバンドがまだガランとしたフロアに向かって熱演していました。



続いて登場したスマートソウルコネクションなるバンド、久しぶりに惹かれる対バンアーティストでした。ハーモニカがメロディを歌い、歌詞はタイトルを連呼するだけというスタイル。演奏がしっかりしているからコミカルでありながらも決してイロモノにはならない底力で楽しませてくれました。これだけ場内を盛り上げているのを感じ、このあとに登場する負けん気の強い男たちは更に気合が入っているはずとこっそりほくそ笑んでいたのはナイショです。



セットチェンジのあと「祭りだぁぁぁ!」というお触れ(?)が多重録音された謎のSEが流れ、宴の始まりを待ちきれない我々はフロアに立ってスタンバイです。そしていよいよ5人の男たちがステージに登場。今年の祭りの幕開けに選んだナンバーは「漕げよ浮き舟」です。自分にとって神曲と呼べるほどのキラーチューンでのオープニングに、瞬間湯沸かし器のように一気にテンションはMAXです。この感覚、10年前東京ドームでのTHE POLICE再結成ライヴの一発目が「孤独のメッセージ」だった時以来のカチッ、ボーンっ!という感じです。ウォームアップの時間もなく興奮の坩堝に叩き込まれたものの合いの手もコーラスもフルパワーでの参加で、開始数分にして早くもヒートテックの下が汗ばんできたほどです。この♪ラララ~ララ~ララ…というコーラスを一緒に歌うとなぜかとても晴れやかな気持ちになると同時に、目頭が熱くなるのですから、やはり自分にとって神曲なのです。



THE TWISTARSの魅力のひとつは圧巻のツインヴォーカルです。「漕げよ浮き舟」から声質もタイプ違うタマちゃん、アキラさん2人の声が交差し、引き立て合い、そして渾然一体と融合するという魅力全開です。



白いシャツ纏ったタマちゃんことタマ伸也さん。短いセットだけにそのトーク力を存分に発揮する事ができませんでしたが、ヴォーカリスト、ミュージシャンとしてのかっこよさをたっぷり堪能させてもらいました。



国籍不明の異邦人といった出で立ちに素足のアキラさんは、ソロやザ・コブラツイスターズ1/2で見せる姿とは全く別な、まるで何かが降臨して憑依したかのようで、他の活動とはまた違った楽しみかたをしているようです。



フロントマンの2人をコントロールしながらも普段のアコギに代わってエレキを弾きまくる相馬圭二さん。自分たちにとっては20年近く「リーダー」のままで、ギターソロは生き生きしてかっこよかったなぁ。



そんな個性の強い、いや強すぎる兄さん達にいじられ、時には無茶振りにも応えつつも後ろでしっかりと手綱を握る、文字通り扇の要の位置でリズムを司る智史さん。THE TWISTARSサウンドのかっこよさには無くてはならない存在です。



数年前に加入してもう今ではこの人の的確なベースラインがないTHE TWISTARSライヴなんて考えられない知久真明さん。グイグイと出てくるタイプではないだけに職人肌を感じる人です。



タマちゃんの挨拶のあと2曲目は「踊る神様」です。毎度の事ながらエキゾチックな香り漂う小さな太鼓を提げてのアキラさんの姿は異邦人化に一層の拍車がかかります。



今宵唯一おととしにリリースされた現時点での最新アルバム「ラストサバニ」からセットインした「太陽の子供たち」は今までスパニッシュ・ギタリストの今泉さんが参加してのステージだったために、タマちゃんのギターから始まるのが新鮮でした。それでもこの曲の持つグルーヴ感は損なわれることなくグイグイと引っ張っていってくれました。



続いて「僕たちのブルースナンバーです。みなさんも一緒に盛り上げてください!よろしくお願いしますよっ!」というタマちゃんの紹介と共に始まったのは、これも外せないナンバー「正調ワッショイ節」です。今夜初めてTHE TWISTARSに接するであろうお客さんをも巻き込んで場内はもう焚火を囲んでの祭りの夜の様相です。きっと意識するしないに関わらず我々のDNAに組み込まれている「祭囃子」に自然に身体が反応し血湧き肉躍る部分が成せる技なのではないでしょうか。



オープニングアクトとして出演した若いバンドのメンバーたちにタマちゃんが語りかけるように「自分たちがあの年齢だった頃、やはりこうして同じ吉祥寺のライヴハウスで演奏していたけど、その頃は対バン相手とは口もきかなきゃステージどころかリハすら見ない、そんな時代だったのですよ。でもこうして音楽を続けていて、その間には素晴らしい出会いがたくさんあってさ。もちろん辛い別れもいくつもあったけど、続ける事をやめないで欲しいのです。そんな想いを込めた曲です。」と紹介されたのは、与論島の言葉で「音楽で魂を高揚させる人」という意味を持つタイトルの「ウキユチイタニ」です。ライヴで聴くたびに思う事ですが、この5人の男たちは正にウキユチイタニです。その曲で音楽で、単に勢いでガンガン盛り上げるだけではなく、こうしたスローな曲で心の琴線にそっと触れ、我々の心を双方向に揺さぶります。それがTHE TWISTARSなのです。



そして早くもラストナンバーです。そりゃもうこれしかないでしょうという「アジアの台風」ですよ。もうステージから火花が吹き出しているのではないかと感じさせる白熱したステージで、途中相馬さんはステージからフロアに飛び降りてギターソロを続けちゃうし、汗だくのタマちゃんは白いシャツがベッタリカラダに張り付いちゃっているし、アキラさんは意味不明なチカラの入った動きをしているし。フロアのこちらも歌って、跳んで、叫んで、拳振り上げての盛り上がりで、もう身体中の毛穴からドーパミンが噴出するのではないかと思うほど。曲が終わったあとにステージにへたり込むタマちゃん同様に、自分もフロアの端の椅子に崩れ落ちる様に座り込み、ペットボトル半分くらいあった水を一気に飲み干しました。



曲数にして6曲、1時間にも満たないセットで、もちろんもっと聴きたいという思いはあると同時に、THE TWISTARSの魅力をギューっと圧縮して詰め込んだ物凄く充足感があるステージでもありました。特に今夜そう感じられたのは会場がライヴハウスだったことも大きいと思うのです。ここに集まる人は音楽を目的に来ており、団体さんのおしゃべりや酔った人の騒ぎなどを気にしないで音楽に集中できる場所なのです。それもフロアに躍り出て音楽に身を委ねて自分なりの楽しみ方ができる会場でしたし、さらにここはステージが高くて見上げる様な高さがあったのも大きかったと思います。スタンディングになると鼻から上くらいしか見えない段差みたいなステージとは違い、見上げて拳を振り上げているとひしひしとロック・コンサートの醍醐味を感じられるのです。対バンだから出番短いしなぁと躊躇していた今夜のライヴ、行って良かったぁ!できるものなら、来年の祭りはこういう会場でガッツリとワンマンで行って欲しいなぁ。いずれにせよまた1年後にウキユチイタニたちが集結するのを楽しみに浮き舟を漕いで日々を進んでいこうと思うのであります。  

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2018.1.14 よなは徹@Live & Shot.Bar Tarumassyu

2018年01月14日 / よなは徹

2018.1.14 よなは徹「たったひとり歌会 vol.52」@Live & Shot.Bar Tarumassyu



新年2日の那覇空港。トンボ返りで東京へ戻るフライトへの搭乗を促すアナウンスに急かされる様にゲートに向かう中、ふと足が止まったのはロビーのテレビから流れてきた「かぎやで風節」の音でした。正月特番なのかゆったりした琉球舞踊の流れが映し出されていて、今年もお笑い番組に腹を抱えて爆笑しているうちに新しい年を迎えてしまっていただけに、まるで「春の海」の琴の音色を耳にしたかのように一気に正月気分が高まったのです。ボーディングブリッジへと足早に歩きながら、今年最初のライヴはよなは徹さんのライヴだから、この曲が聴かれるかもしれないとニンマリしたのです。



小正月前夜、期待を胸に駆けつけた西大井タルマッシュ。ほぼ開演時間に黒いモノトーンで統一したいでたちの徹さんがステージに登場。オープニングのイントロでもう鳥肌です。そうです、新年最初の生音は期待通りの「かぎやで風節」です。「あらたまの年に 炭と昆布かざて こころからすがた若くなゆさ」という正月用の歌詞で歌われた沖縄の正月になくてはならないこの曲を最初に聴くことはある意味念願でした。以前、新良幸人さんの新年最初のライヴで八重山を代表する正月祝い歌「鷲ぬ鳥」を聴くことができ、その時も同じように鳥肌ものだったのですが、これでコンプリートです。続いて同じく琉球王府の時代に宮廷祝儀の際、国王の前で演奏された「御前風五節」と呼ばれる中の1曲「恩納節」へ。もしかしたらこの5曲を一気に聴かれるのかなと思ったら、これには含まれない祝儀曲「揚竹田節」へ。もうこの3曲で華やいだ雰囲気になりました。



「沖縄では旧暦で祝うのでまだ年は明けてないので、忘年会であり新年会である時期です」という挨拶から、以前作った「正月の歌」というナンバーへ。なんでも今年戌年という歌詞があり12年前にできた曲でそれからあまり唄っていないという貴重な曲です。春のエッセンスあふれた「梅の香り」「貫花(ぬちばな)」、そして毎回このひとり歌会はセットリストは決めずに会場の雰囲気を見ながら次に唄う曲を考えるという話から「南嶽節(なんだきぶし)」という古典曲へ。今夜は一番前の横の席に座る事ができ、音だけでなくいつも感じる徹さんの演奏する時の心地よいまでにピンと伸びた背筋の姿勢の良さ、艶やかなまでに滑らかに動く左手の指の美しさに見とれてしまいました。



続いては昭和の初めに作られた曲「移民小唄」。この曲は歌詞が沖縄の方言ではなく標準語で書かれており、当時方言で歌詞を書くとスパイ容疑がかけられたからだという解説にびっくりです。そして同じく移民の心情を歌った「南洋小唄」へ。こういう歴史の断面が詰まった歌詞は、当時の人たちの心に強く訴えかけるものがあったのだろうなぁという事を考えながら聴き入りました。一部のラストは雄大な歌詞を持つ「白雲節」です。この曲も最近いろいろなアーティストのライヴで聴く機会があり大好きなナンバーになってきています。



休憩を挟んでの二部は「あんやんてぃんどう」でスタート。休憩の間に何を唄おうか考えて、照屋林助さんのナンバーを集めてみましたという事で「あやかり節」「村はじし」「かてーむん」と、息子さんのりんけんバンドも取り上げていたりしてお馴染みの曲が続きます。先月同じ会場で聴いた金城優里英さんのライヴで感じてその時のレポートにも書きましたが、もちろんリアルタイムで聴いていたわけでもないし、ましてや沖縄音楽新参者の自分にとって、こうして今お気に入りのアーティストの方たちがステージで先人たちの残してくれた素晴らしい曲を紹介して聴かせてくれる事は本当に嬉しい事ですし、これも「伝承」という事だと思うのです。そんな今のアーティストが生み出している曲も何十年後かに歌い継がれていると考えると、なんだかとてもワクワクしますし、できる事なら雲の上から聴いてみたいとさえ思います。



てるりんさんのナンバーが続いたら外せないのは徹さんが伝承されている曲弾き、「恩納節」を唄い弾きながら三線の品定めをする「鑑定弾き」の妙技です。三線をくるっと回して左右持ち替えてそのまま演奏したり、胴を手前に竿の反り具合を目視しながら弾いたりと、面白おかしい動作の中に半端なテクニックでは絶対に不可能な技術が凝縮している演奏で、何度目に耳にしても開いた口が塞がらない演目です。



てるりんコーナーが終わりここからは普通の曲をと「チョンチョン節」へ。「チョンチョンキジムナー」としてお馴染みのこの曲「チョンチョン節」という名前だったのですね。恥ずかしながら初めて知りました。映画「ナビィの恋」エンディングで登川誠仁さんが唄われて出会った「ヤッチャー小」、そしてその曲が土地が変わり歌詞も変わったという「具志川小唄」と続いたのですが、一瞬要はパクリなのかなと思ったものの、良く考えれば譜面とか音源ではなく歌が歌として伝わっていく過程で変化していった時代なのだと考えるととても興味深い現象です。興味深いと言えば、続く「富原ナークニー」を聴いていて考えたのですが「ナークニー」とつく曲はたくさんあるのですが、漢字だと「宮古根」と書くのですよね。これは宮古がルーツという意味なのかな。これもじっくりと調べてみたい課題であり、ライヴで沖縄の民謡を聴いて初めて聴く曲に出会い、方言で唄われている歌詞の意味や背景を紐解くうちに数々の疑問が出てくるのです。それを調べていくのがまた楽しいですし、学問や研究などという大それたものではないのですが、ちょっとかっこつけちゃうと知的好奇心をくすぐりまくられるのです。こんなところが自分にとっての沖縄民謡ライヴの魅力でもあります。



ラストに持ってきたのは「ハンタ原」。途中から早弾きになっていくのですが、それはもう呼吸をするのを忘れて見入ってしまうほどの指使いです。そんな時でも姿態が一切ぶれずに軸がピン通ったままの徹さんの演奏にはもう惚れ惚れしてしまいます。最後の一音の余韻が消えてやっと無酸素聴視から解放され我に返り、力いっぱいの拍手で熱演に応えました。



アンコールは更に早弾きが冴えまくる「遊び天川」です。この曲はいつも思うのですが唄だけで考えるとものすごくゆったりとしており、ひとつひとつの言葉が息の続くギリギリまで引っ張るように伸びていくものなのに、三線の音数は異様なまでに多い。これを同時にやるんだからもう開いた口が塞がりません。このままお約束のように「唐船どーい」に続くのかなぁと思ったのですが、ビシッとこの曲で終わらせてくれました。決して「唐船どーい」が嫌いなのではないのです。もう初めの頃はそれが楽しみで徹さんのライヴに行っていましたし、何度聴いても、今でも圧巻なことには違いありません。ただあの「立つ?カチャーシー?」みたいな空気感は場所や雰囲気を選ぶと思うのです。そして今宵の、自分を含めて徹さんの唄三線をじっくりと聴きたいという思いのお客さんで埋まっていた会場では、これでよかったと思いましたし、これが徹さんが仰っていた「何も決めずにその場の雰囲気で曲を決める」という事なのだとわかり、天晴れ!と膝を叩きそうになりました。



今年のライヴ始めが徹さんのこんな華やかで素敵なライヴであったことが心底嬉しかったです。それは平成30年も、たくさんの良いライヴに恵まれ、たくさんの新たな今まで知らなかった名曲に出会えることを予感させてくれるようでした。中学生の頃からライヴ通いに目覚め四十数年、ずっと知っている曲、好きな曲であふれたセットに興奮してきましたが、ここのところライヴで初めて出会う曲にハマってそこから好きになっていく悦びを知り、それが楽しみにさえなってきました。そして今夜新たに生まれたいくつかの「?」という課題を楽しみながら探究していきたいと思います。
  

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2017.12.22 ◎ターシ@bar YaYa ebisu

2017年12月22日 / その他(沖縄)

2017.12.22 ◎ターシ この上ないライブ・クリスマス忘年会@bar YaYa ebisu



自分にとって2017年の最後のライヴは、奇しくも今年出会ったアーティスト、◎ターシさんのライヴとなりました。キャリアは長い方ですので、出会いと言っても自分が今年知ったというだけですし、今年といってもまだその歌声に出会って1ヵ月ちょっとです。11月に那覇を訪れた際に、ちょうどsala-sajiのラジオ番組の生放送がオープンスタジオであってその場をサプライズ訪問したのですが、その時ゲストで出演されていたのが◎ターシさんで、番組中に流れた歌声とスタジオのガラス越しにでも伝わるような人柄の魅力にガッツリと心を掴まれて、番組終了後に早速CDを買いに行ったという偶然がもたらしてくれた出会いでした。その数日後に東京で◎ターシさんと店長さんのユニット與那嶺商会のライヴを見る機会に恵まれ、ソロのライヴも近場であると知り駆けつけることができるというとんとん拍子の急接近っぷりです。今夜のライヴは15人ほどが入るバーに、ディープな◎ターシ・マニアが集結する忘年会形式なもので、新参者の自分には初めての場所ということもありアウェー感満載な気分でドアを開けたのですが、カウンターの一番奥にいらした◎ターシさんの笑顔を見ただけで、なんだかもう大丈夫という気持ちになりました。



お客さんもそろった頃にさぁ始めましょうねーという感じで開演です。クリスマス忘年会ということで「きよしこの夜」でスタート。2日前に行った新良幸人さんのライヴのラストがこの曲だったのでちょっとおかしかったのですが、◎ターシさんの優しく澄んだ声は幸人さんの声とはまた違った魅力で聖夜の訪れを告げてくれます。その流れで達郎さんの「クリスマス・イブ」へ。この定番曲も声に合うなぁ。クリスマスソングが続いたところで外人ミュージシャン・モードになったのか、リチャード・マークスの「Now and Forever」、そしてザ・フーターズのロブ・ハイマンとの共作でシンディー・ローパーが生んだ名曲のひとつ「Time After Time」とどんぴしゃストライク・ゾーンの洋楽カヴァーが続きました。こういうところ同年代のミュージシャンっていいなぁ。ちょっとずれると知らない曲になってしまうのですから。もう1曲プレスリーの「Can’t Help Falling in Love」も◎ターシさんの声質にぴったりとあうカヴァーで、マニアのご婦人方はうっとりとされていらっしゃいました。



休む間もなく全国をツアーして回っていて、北海道にもよく行かれており、札幌はみんな手を繋いで歩いていて恋が溢れる街だなぁという思いがあり、沖縄だったらうっかり手を握ると「暑いっ!」って嫌がられてしまうという話からの次の曲は確かタイトルは「SPK」と紹介されていました。SPK…たしか札幌の都市コード。それをそのままタイトルにするってなんとも粋だなぁ。心温まるようなラヴソングでした。第一部のラストはベン・E・キングのナンバー「Stand By Me」でゆったりと締めてくれて休憩です。休憩と言ってもマイクの前にいないだけでその場で一緒に飲んでいるというなんとも素敵な雰囲気です。



「二部は沖縄らしい曲をやろうねー」というトークからブレイク明けはまず「てぃんさぐぬ花」からスタートしました。そして與那嶺商会としての新しいアルバムにも収録されているブルージーな「あかばなー」へと続きます。そして今夜ソロ・ライヴに初めて来るにあたりぜひ聴きたかったナンバー「じゅーしぃ食べたらいさぁ」を歌ってくれました!この曲は前述のラジオ生放送でかかり心つかまれた2曲のうちのひとつで、この声で「淋しくなったらやわらかい じゅーしー食べたらいいさぁ」と歌われたらもうたまりません。途中お客さんも一緒にセミの声を出したり、◎ターシさんに合わせて歌詞に合わせて首を傾げたりとマニアの方たちの一体感が凄い!慌てて追いつきました。この1曲だけでももう早目のクリスマス・プレゼントだったのですが、立て続けに歌われたのはその2曲のもうひとつの「ナチカジ(夏風)」でとろけそうになりました。◎ターシさんののびやかな声が響く名曲です。この2曲の流れはまるで自分と◎ターシさんの出会いを振り返らせてくれるかのようで満ち足りた気持ちにさせてくれました。



ここでお店のマスターであるミュージシャンの久木田恵一さんがスペシャルゲストとしてステージへ。ハイトーンなきれいな歌声での弾き語りでサザンの「CHRISTMAS TIME FOREVER」、中島みゆきさんの「糸」、玉置浩二さんの「メロディー」とお馴染みなナンバーのカヴァーと、オリジナルの「古(いにしえ)坂」を聴かせてくれました。そしてマイクに戻った◎ターシさんも、ここから第二部後半への突入です。マニアの方にはお馴染みのようで自分にとっては初めての「夢の翼」。そしてマニアの方からのリクエストがあったようで陽水さんの「氷の世界」が歌われました。同年代らしき◎ターシさんの原点はここらへんなのかも知れないなぁ。歌いたい曲がありますと紹介された「フクギ」、そしてラストは自分自身もマニアの方たちに紛れ込んでコール&レスポンスや変則手拍子に置いて行かれないように付いていこうと必死になった楽しいナンバー「テレパス」で大盛り上がりです。もっともっとライヴに通って、条件反射的にできるようになりたいなぁ、そんな気持ちになりました。



アンコール、といっても捌ける場所がないのでズンズンとしゃがみこんで、再びズンズンと立ち上がってのアンコール登場。これまた初めて聴くナンバー「桜、葉桜、夜に舞う桜」。◎ターシさんらしいグッと沁みてくる曲でした。



こうして今年最後のライヴは終了です。初めてソロ・ライヴに参加して思うのは、ひょんなきっかけで出会ったお名前くらいしか存じ上げなかったアーティストの歌声に心を鷲掴みにされ、その人本人が醸し出す空気に心地よささえ感じ、そのすべてに感じる「包容力」に身を委ねたくなるという、まるで昭和乙女の恋のような感覚を得てしまったのだということです。それも5週間ほどの間にここまでになってしまったのだから相当なものです。回遊魚のように全国を泳ぎ回る◎ターシさんのスケジュールを小まめにチェックして、また身を委ねに行こうと思います。1年の終わりに、今年らしい終わり方で締めくくることができました。
  

Posted by Ken2 at 23:59Comments(0)