2019.12.19 KISS @ ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
2019年12月19日
2019.12.19 KISS "End of the Road World Tour" @ ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)

僕が中学生だった70年代中盤には、とても昭和な言い回しですが「洋楽御三家」と呼ばれた三大人気バンドが君臨していました。エアロスミス、クィーン、そしてKISSです。3つ歳上の兄の世代はツェッペリンやパープルという王道ロックバンドの世代なのですが、僕はロック体験の入り口がこの御三家でした。75年のクィーン初来日の際13歳でコンサート・デビューを果たし、翌年の再来日ももちろん行き、77年には高校受験の最中にエアロスミスの初来日にも駆けつけて、その2ヶ月あとの高校入学式直前に遂にKISS初来日公演が実現したのです。そこから数えても42年です。その間ずっと愛聴していたかと問われればハイとは言えませんが、今年初めからスタートした彼らのツアーは「エンド・オブ・ザ・ワールド・ツアー」と名付けられた、2021年夏まで続く最後のツアーということなのです。........あ、そうですか。何度目のサヨナラツアー?それに「ツアーは最後と言ったけれど、コンサートをやらないとは言っていないぞ!」などというオチが待っているのでしょうね。それでも良いのです。KISSですもの。くされ縁と言いますか、もう何でもありで商魂たくましい彼らの活動を百も承知の上で手のひらの上で踊らされる事を楽しんでしまえば、細かいことや辻褄合わなくても構わないのです。思い出いっぱい詰まった遊園地にウルトラマン・ショーを見に行くようなものなのです。

自分の中でヘンなこだわりがあって、なぜか彼らのライヴは武道館でなくてはイヤなのです。いままでも東京ドームで行われた際には敢えて行かなかった程です。理由は自分でも定かではないのですが、僕の遊園地は巨大過ぎてはいけないのです。今回も東京はドーム公演で最初は断念したのですが、(もしかしたら)最後だからなぁと考え抜いて、東京より後からチケットが発売され、アリーナ・クラスの会場であり、なおかつ日本最終公演である名古屋に白羽の矢を立てたというわけです。

会場に入ると同年代かそれ以上の年齢層の人たちが抑え切れないワクワクした表情で、思い思いにステージをバックにみんな舌を出したり、デヴィルサインでポーズ決めての記念撮影大会でした。開演時間19時の数分前にツェッペリンの「ロックン・ロール」が流れ始めると、まだ客電が落ちるまえなのに総立ちで、このBGMさえ大合唱です。

お客さんも一緒に叫ぶ“Alright Nagoya! You wanted the best, you got the best. The hottest band in the world. KISS!!”のアナウンスとともに幕は切って落とされました。オープニングは「Detroit Rock City (デトロイト・ロック・シティ)」です。てっきり空中からミニステージに乗って降りて来ると思っていたら普通にステージに立っていて、ちょっと拍子抜けしました。そんな思いは一瞬で、もうこの史上最強のオープニング・チューンに狂喜乱舞です。頭からの大合唱に留まらず、途中のギターソロのメロディまで“ララララー…”と大合唱しちゃうのですから、ファンはみんな年季入っています。最高です!

火柱上がりまくりの2曲目はこれまたキラー・チューンの「Shout It Out Loud (狂気の叫び)」と続くからたまりません。“シャーリッ、シャーリッ、シャリアッラー!”とカタカナ英語で大合唱です。

コンバンワ、ナゴーヤ!今日はこのみなさんの美しい国での最後の夜だ。みんなワイルドになって最高の夜にしようぜ!というポールのあいさつに続いてはファースト・アルバムからの「Deuce (ジュース)」をやってくれちゃうのですから、これまたフルコーラスのシンガロングです。

ここからは僕にとっては最近の曲、と言っても80-90年代の作品なのですが「Say Yeah (セイ・イェー)」「I Love It Loud (勇士の叫び)」「Heaven's on Fire (へヴンズ・オン・ファイヤー)」と進みます。70年代の曲に比べ自分には思い入れの多くない時代の曲ですが、それでも大合唱です。そもそもKISSの曲って例え知らない曲でも2コーラス目にになる頃には一緒に歌えてしまうのです。

「War Machine (ウォー・マシーン)」の最後は見せ場のひとつ、ジーンの火吹きシーンです。77年の武道館で2階席の後ろから4列目から見た、当時は「Firehouse」のラストに披露されたこの火吹きに大興奮したものですが、今回は幸運にもステージから4列目のど真ん中という目の前でこのシーンを体験でき震えるほど興奮するとともに、この40年を超える時の流れに感慨深いものを感じました。

盛り上がった「Lick It Up (地獄の回想)」に続いて、76年に発表された5枚目のアルバム「地獄のロックファィアー」からの僕の大好きなナンバー「Calling Dr. Love (悪魔のドクター・ラブ)」です。ジーンがヴォーカルの曲なのですが、僕の中で今でもジーンはアイドルであるのです。お茶目でありながら楽しませる事に徹底したプロ意識は本当にすごい。そんなジーンに指差されると、少女のようにクラクラきて手を振ってしまいます。よくよく考えたら70歳のジーンに指差されて、興奮して手を振る58歳というオッサン同士の異様な光景なのですが、アイドルなんだから仕方ないのです。この曲のシメにジーンが言った「何故だかわかるか?それは俺がお前のドクター・ラヴだからさ!」というセリフが全てを物語っています。ジーン・シモンズという悪魔は僕にとって永遠のドクター・ラヴなのです。

続いてはこれまた45年前のファースト・アルバムから「100,000 Years (10万年の彼方)」で、エリックのドラムソロが入ります。そう言えば最近のコンサートではドラムソロって減ってきたなぁ。最後はドラムセットごとリフトアップされての大熱演です。さらに「77年にここ名古屋でも演った曲をやるぜ!」と同じくファーストからの「Cold Gin (コールド・ジン)」へと続いたので、オールドファンの大合唱は留まることを知りません。

そしてKISSのコンサートで僕のハイライトとも言うべき時がやって来ました。薄暗い照明に雷鳴が響き、スクリーンには稲妻が光る中、おもむろに中央に登場したジーンの口から流れる血。子供騙しのイロモノ的演出なのですが、何度見ても興奮するのです。そのままジーンを乗せた円盤ステージは高くせり上がってゆき「God of Thunder (雷神)」が世界を支配してゆきます。この重厚なベース・ラインは僕にとってヴァン・ヘイレンの「悪魔のハイウェイ」と並ぶベース・ライン神曲です。期せずして悪魔繋がりですが。高いところに仁王立ちして歌う雷神様を見上げながらの大合唱です。

コンサートも終盤に差しかかり、鮮やかなヴィジュアル演出とともに演奏された「Psycho Circus (サイコ・サーカス)」の曲紹介では「みなさん最高です!」の最高とサイコをかけるというワザまで織り込んでいました。オールドファンには嬉しい「Let Me Go, Rock'N' Roll (レット・ミー・ゴー・ロックン・ロール)」ではトミーのギターソロも。このギタリストトミーとドラマーのエリックに関してはオリジナル・メンバーではないのですが、彼らのメイクのおかげで全く違和感が無く、むしろエースとピーターではないということを忘れる時があるほどです。

「ガキの頃に大ヒットしていて、何を歌っているのかさっぱりわからなかったけど大好きな曲があるんだ。」と言うポールの話しとともにギターの弾き語りで一節歌われたのは、坂本九さんが全米チャートNo.1を記録した「上を向いて歩こう」です。場内ももちろん大合唱となり、とても和やかな雰囲気です。

「みんな俺の名前を叫んでくれ!俺がそっちに行くから!」という声とともに、もうひとつのハイライトシーン、「Love Gun (ラヴ・ガン)」のイントロにのせてポールの宙乗りタイムです。アリーナの客席の上を、最後方に設置されたサブステージまで飛んでいきます。この曲の銃声のようなビートは本当にカッコいい!!

ポールはサブステージにいたままで「次の曲は簡単だからみんな一緒に歌ってくれよ!」とまずは練習タイム。練習しなくてもみんな歌えますって。なんせ「I Was Made for Lovin' You (ラヴィン・ユー・ベイビー)」ですもの。この曲が出た当時はなんでKISSが時代の流行りに乗っかってディスコ・ナンバー作ってんだよと憤慨していたものですが、今となってはそんな事お構いなしで、ライヴにはなくてはならないナンバーです。だって楽しいんですもの。もうKISSはエンタティナーであるのですから、楽しんでナンボなのです。細い事にガタガタ言っていたら、それは楽しみ方を知らないって事なのです。

メインステージに戻ったポールの叙情的なギターが奏でるメロディが地獄の狂宴の終わりの時が来た事を伝えます。これで終わることをファンならば覚悟する「Black Diamond (ブラック・ダイアモンド)」です。そのため我々も今まで以上に声を限りに大合唱です。最後はエリックのドラムセットも猫の紋章の幕をつけてせり上がってゆき、火柱と爆音とともに華やかな終演です。

もちろんこれで収まるはずはありません。We Want KISS!のコールに応えてのアンコールです。先ずはエリックがピアノの弾き語りで「Beth (ベス)」を披露。至極のバラードです。東京、大阪のドーム公演ではX JAPANのYOSHIKIさんがゲストで登場しアンコールで共演したとの話を聞いていたので今日もかなと思っていましたが現れずです。彼には特に何の感情もないものの、日本最終公演で、多分僕にとって最後のKISSのコンサートのラストにゲストは必要ありません。むしろ彼らだけで演ってくれて良かったです。

この曲のあと、メンバー4人がステージ前方でご挨拶。幕を掲げてくれたり、「日本のみんなの事は絶対に忘れないから!」とファン泣かせのメッセージも。まだアンコールは続くのですが、大円団終了の後は姿をサッと消すのが我らがKISSなのです。グチグチと引っ張り別れを惜しむのではなく、パッと有終の美を飾り、夢の時間に終止符を打つのです。

アンコール2曲目は名作アルバム「地獄の軍団」から「Do You Love Me (ドゥー・ユー・ラヴ・ミー)」です。日本公演以前の海外でのセットリストのは入っていなかったのでまたまた狂喜乱舞です。ロゴの入ったバルーンも場内を飛び交いさらに盛り上げます。

そのまま流れるように始まったイントロは、KISSを代表するナンバーであり、70年代を飾るロック・チューンと称しても過言ではないはずの「Rock and Roll All Nite (ロックンロール・オールナイト)」です。のっけから爆音とともにメタリックテープが撃ち放たれ、大量の紅白の紙吹雪とスモークでステージのメンバーの姿がほとんど見えない状態です。そんな中無茶苦茶陽気で明るいこのナンバーの”I wanna Rock and Roll all nite! And party everyday!”という能天気なサビを一緒に歌っていたら、突然これで最後なんだという感傷がふつふつと湧いてきて、最後は涙ながらに叫ぶように歌っていました。

そのまま暗転したままのステージからメンバーは去り、明るくなった場内では椅子の上に紙吹雪が文字通り降り積もっており、祭りの終焉を否が応にも認めざるを得ません。後ろの席の同年代のご婦人が「終わっちゃった... 終わっちゃった...」と泣き出したのですが、横の旦那さんらしき人は友達と興奮したまま話し込んで放置していたので、思わず抱きしめてしまい、一緒にもらい泣きしちゃいました。楽しかった40年以上の思い出に感謝だよねと、見ず知らずのご婦人と慰め合い笑顔で別れ会場を後にしました。

最後こそ自分でも驚くほどセンチメンタルな気分になってしまいましたが、まー楽しかった!思いっきりKISS遊園地で遊ばせてもらいました。これだけ楽しませることに徹底したバンドは先ず他に類を見ないし、それができるのもストイックなまでのプロ意識と技術があっての事なのは言うまでもありません。僕の人生の中で、青春時代から今日に至るまで楽しませ続けてくれたKISSには感謝しかないのです。彼らのコンサートに行けば僕は十代の感覚に戻る事ができたのです。それはまるで回春薬のような効き目があるのです。そんなバンドが僕の人生に君臨していてくれて本当に良かった。さぁ、余韻が収まったらそろそろ青春時代からの成長を始めよう。でもまだまだ枯れやしねぇぞ!
- SETLIST -
Detroit Rock City
Shout It Out Loud
Deuce
Say Yeah
I Love It Loud
Heaven's on Fire
War Machine
Lick It Up
Calling Dr. Love
100,000 Years
Cold Gin
God of Thunder
Psycho Circus
Let Me Go, Rock'N' Roll
上を向いて歩こう
Love Gun
I Was Made for Lovin' You
Black Diamond
-encore-
Beth
Do You Love Me
Rock and Roll All Nite
僕が中学生だった70年代中盤には、とても昭和な言い回しですが「洋楽御三家」と呼ばれた三大人気バンドが君臨していました。エアロスミス、クィーン、そしてKISSです。3つ歳上の兄の世代はツェッペリンやパープルという王道ロックバンドの世代なのですが、僕はロック体験の入り口がこの御三家でした。75年のクィーン初来日の際13歳でコンサート・デビューを果たし、翌年の再来日ももちろん行き、77年には高校受験の最中にエアロスミスの初来日にも駆けつけて、その2ヶ月あとの高校入学式直前に遂にKISS初来日公演が実現したのです。そこから数えても42年です。その間ずっと愛聴していたかと問われればハイとは言えませんが、今年初めからスタートした彼らのツアーは「エンド・オブ・ザ・ワールド・ツアー」と名付けられた、2021年夏まで続く最後のツアーということなのです。........あ、そうですか。何度目のサヨナラツアー?それに「ツアーは最後と言ったけれど、コンサートをやらないとは言っていないぞ!」などというオチが待っているのでしょうね。それでも良いのです。KISSですもの。くされ縁と言いますか、もう何でもありで商魂たくましい彼らの活動を百も承知の上で手のひらの上で踊らされる事を楽しんでしまえば、細かいことや辻褄合わなくても構わないのです。思い出いっぱい詰まった遊園地にウルトラマン・ショーを見に行くようなものなのです。
自分の中でヘンなこだわりがあって、なぜか彼らのライヴは武道館でなくてはイヤなのです。いままでも東京ドームで行われた際には敢えて行かなかった程です。理由は自分でも定かではないのですが、僕の遊園地は巨大過ぎてはいけないのです。今回も東京はドーム公演で最初は断念したのですが、(もしかしたら)最後だからなぁと考え抜いて、東京より後からチケットが発売され、アリーナ・クラスの会場であり、なおかつ日本最終公演である名古屋に白羽の矢を立てたというわけです。
会場に入ると同年代かそれ以上の年齢層の人たちが抑え切れないワクワクした表情で、思い思いにステージをバックにみんな舌を出したり、デヴィルサインでポーズ決めての記念撮影大会でした。開演時間19時の数分前にツェッペリンの「ロックン・ロール」が流れ始めると、まだ客電が落ちるまえなのに総立ちで、このBGMさえ大合唱です。
お客さんも一緒に叫ぶ“Alright Nagoya! You wanted the best, you got the best. The hottest band in the world. KISS!!”のアナウンスとともに幕は切って落とされました。オープニングは「Detroit Rock City (デトロイト・ロック・シティ)」です。てっきり空中からミニステージに乗って降りて来ると思っていたら普通にステージに立っていて、ちょっと拍子抜けしました。そんな思いは一瞬で、もうこの史上最強のオープニング・チューンに狂喜乱舞です。頭からの大合唱に留まらず、途中のギターソロのメロディまで“ララララー…”と大合唱しちゃうのですから、ファンはみんな年季入っています。最高です!
火柱上がりまくりの2曲目はこれまたキラー・チューンの「Shout It Out Loud (狂気の叫び)」と続くからたまりません。“シャーリッ、シャーリッ、シャリアッラー!”とカタカナ英語で大合唱です。
コンバンワ、ナゴーヤ!今日はこのみなさんの美しい国での最後の夜だ。みんなワイルドになって最高の夜にしようぜ!というポールのあいさつに続いてはファースト・アルバムからの「Deuce (ジュース)」をやってくれちゃうのですから、これまたフルコーラスのシンガロングです。
ここからは僕にとっては最近の曲、と言っても80-90年代の作品なのですが「Say Yeah (セイ・イェー)」「I Love It Loud (勇士の叫び)」「Heaven's on Fire (へヴンズ・オン・ファイヤー)」と進みます。70年代の曲に比べ自分には思い入れの多くない時代の曲ですが、それでも大合唱です。そもそもKISSの曲って例え知らない曲でも2コーラス目にになる頃には一緒に歌えてしまうのです。
「War Machine (ウォー・マシーン)」の最後は見せ場のひとつ、ジーンの火吹きシーンです。77年の武道館で2階席の後ろから4列目から見た、当時は「Firehouse」のラストに披露されたこの火吹きに大興奮したものですが、今回は幸運にもステージから4列目のど真ん中という目の前でこのシーンを体験でき震えるほど興奮するとともに、この40年を超える時の流れに感慨深いものを感じました。
盛り上がった「Lick It Up (地獄の回想)」に続いて、76年に発表された5枚目のアルバム「地獄のロックファィアー」からの僕の大好きなナンバー「Calling Dr. Love (悪魔のドクター・ラブ)」です。ジーンがヴォーカルの曲なのですが、僕の中で今でもジーンはアイドルであるのです。お茶目でありながら楽しませる事に徹底したプロ意識は本当にすごい。そんなジーンに指差されると、少女のようにクラクラきて手を振ってしまいます。よくよく考えたら70歳のジーンに指差されて、興奮して手を振る58歳というオッサン同士の異様な光景なのですが、アイドルなんだから仕方ないのです。この曲のシメにジーンが言った「何故だかわかるか?それは俺がお前のドクター・ラヴだからさ!」というセリフが全てを物語っています。ジーン・シモンズという悪魔は僕にとって永遠のドクター・ラヴなのです。
続いてはこれまた45年前のファースト・アルバムから「100,000 Years (10万年の彼方)」で、エリックのドラムソロが入ります。そう言えば最近のコンサートではドラムソロって減ってきたなぁ。最後はドラムセットごとリフトアップされての大熱演です。さらに「77年にここ名古屋でも演った曲をやるぜ!」と同じくファーストからの「Cold Gin (コールド・ジン)」へと続いたので、オールドファンの大合唱は留まることを知りません。
そしてKISSのコンサートで僕のハイライトとも言うべき時がやって来ました。薄暗い照明に雷鳴が響き、スクリーンには稲妻が光る中、おもむろに中央に登場したジーンの口から流れる血。子供騙しのイロモノ的演出なのですが、何度見ても興奮するのです。そのままジーンを乗せた円盤ステージは高くせり上がってゆき「God of Thunder (雷神)」が世界を支配してゆきます。この重厚なベース・ラインは僕にとってヴァン・ヘイレンの「悪魔のハイウェイ」と並ぶベース・ライン神曲です。期せずして悪魔繋がりですが。高いところに仁王立ちして歌う雷神様を見上げながらの大合唱です。
コンサートも終盤に差しかかり、鮮やかなヴィジュアル演出とともに演奏された「Psycho Circus (サイコ・サーカス)」の曲紹介では「みなさん最高です!」の最高とサイコをかけるというワザまで織り込んでいました。オールドファンには嬉しい「Let Me Go, Rock'N' Roll (レット・ミー・ゴー・ロックン・ロール)」ではトミーのギターソロも。このギタリストトミーとドラマーのエリックに関してはオリジナル・メンバーではないのですが、彼らのメイクのおかげで全く違和感が無く、むしろエースとピーターではないということを忘れる時があるほどです。
「ガキの頃に大ヒットしていて、何を歌っているのかさっぱりわからなかったけど大好きな曲があるんだ。」と言うポールの話しとともにギターの弾き語りで一節歌われたのは、坂本九さんが全米チャートNo.1を記録した「上を向いて歩こう」です。場内ももちろん大合唱となり、とても和やかな雰囲気です。
「みんな俺の名前を叫んでくれ!俺がそっちに行くから!」という声とともに、もうひとつのハイライトシーン、「Love Gun (ラヴ・ガン)」のイントロにのせてポールの宙乗りタイムです。アリーナの客席の上を、最後方に設置されたサブステージまで飛んでいきます。この曲の銃声のようなビートは本当にカッコいい!!
ポールはサブステージにいたままで「次の曲は簡単だからみんな一緒に歌ってくれよ!」とまずは練習タイム。練習しなくてもみんな歌えますって。なんせ「I Was Made for Lovin' You (ラヴィン・ユー・ベイビー)」ですもの。この曲が出た当時はなんでKISSが時代の流行りに乗っかってディスコ・ナンバー作ってんだよと憤慨していたものですが、今となってはそんな事お構いなしで、ライヴにはなくてはならないナンバーです。だって楽しいんですもの。もうKISSはエンタティナーであるのですから、楽しんでナンボなのです。細い事にガタガタ言っていたら、それは楽しみ方を知らないって事なのです。
メインステージに戻ったポールの叙情的なギターが奏でるメロディが地獄の狂宴の終わりの時が来た事を伝えます。これで終わることをファンならば覚悟する「Black Diamond (ブラック・ダイアモンド)」です。そのため我々も今まで以上に声を限りに大合唱です。最後はエリックのドラムセットも猫の紋章の幕をつけてせり上がってゆき、火柱と爆音とともに華やかな終演です。
もちろんこれで収まるはずはありません。We Want KISS!のコールに応えてのアンコールです。先ずはエリックがピアノの弾き語りで「Beth (ベス)」を披露。至極のバラードです。東京、大阪のドーム公演ではX JAPANのYOSHIKIさんがゲストで登場しアンコールで共演したとの話を聞いていたので今日もかなと思っていましたが現れずです。彼には特に何の感情もないものの、日本最終公演で、多分僕にとって最後のKISSのコンサートのラストにゲストは必要ありません。むしろ彼らだけで演ってくれて良かったです。
この曲のあと、メンバー4人がステージ前方でご挨拶。幕を掲げてくれたり、「日本のみんなの事は絶対に忘れないから!」とファン泣かせのメッセージも。まだアンコールは続くのですが、大円団終了の後は姿をサッと消すのが我らがKISSなのです。グチグチと引っ張り別れを惜しむのではなく、パッと有終の美を飾り、夢の時間に終止符を打つのです。
アンコール2曲目は名作アルバム「地獄の軍団」から「Do You Love Me (ドゥー・ユー・ラヴ・ミー)」です。日本公演以前の海外でのセットリストのは入っていなかったのでまたまた狂喜乱舞です。ロゴの入ったバルーンも場内を飛び交いさらに盛り上げます。
そのまま流れるように始まったイントロは、KISSを代表するナンバーであり、70年代を飾るロック・チューンと称しても過言ではないはずの「Rock and Roll All Nite (ロックンロール・オールナイト)」です。のっけから爆音とともにメタリックテープが撃ち放たれ、大量の紅白の紙吹雪とスモークでステージのメンバーの姿がほとんど見えない状態です。そんな中無茶苦茶陽気で明るいこのナンバーの”I wanna Rock and Roll all nite! And party everyday!”という能天気なサビを一緒に歌っていたら、突然これで最後なんだという感傷がふつふつと湧いてきて、最後は涙ながらに叫ぶように歌っていました。
そのまま暗転したままのステージからメンバーは去り、明るくなった場内では椅子の上に紙吹雪が文字通り降り積もっており、祭りの終焉を否が応にも認めざるを得ません。後ろの席の同年代のご婦人が「終わっちゃった... 終わっちゃった...」と泣き出したのですが、横の旦那さんらしき人は友達と興奮したまま話し込んで放置していたので、思わず抱きしめてしまい、一緒にもらい泣きしちゃいました。楽しかった40年以上の思い出に感謝だよねと、見ず知らずのご婦人と慰め合い笑顔で別れ会場を後にしました。
最後こそ自分でも驚くほどセンチメンタルな気分になってしまいましたが、まー楽しかった!思いっきりKISS遊園地で遊ばせてもらいました。これだけ楽しませることに徹底したバンドは先ず他に類を見ないし、それができるのもストイックなまでのプロ意識と技術があっての事なのは言うまでもありません。僕の人生の中で、青春時代から今日に至るまで楽しませ続けてくれたKISSには感謝しかないのです。彼らのコンサートに行けば僕は十代の感覚に戻る事ができたのです。それはまるで回春薬のような効き目があるのです。そんなバンドが僕の人生に君臨していてくれて本当に良かった。さぁ、余韻が収まったらそろそろ青春時代からの成長を始めよう。でもまだまだ枯れやしねぇぞ!
- SETLIST -
Detroit Rock City
Shout It Out Loud
Deuce
Say Yeah
I Love It Loud
Heaven's on Fire
War Machine
Lick It Up
Calling Dr. Love
100,000 Years
Cold Gin
God of Thunder
Psycho Circus
Let Me Go, Rock'N' Roll
上を向いて歩こう
Love Gun
I Was Made for Lovin' You
Black Diamond
-encore-
Beth
Do You Love Me
Rock and Roll All Nite
Posted by Ken2 at 23:59│Comments(0)