2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

2018年03月11日/ 石垣喜幸

2018.3.11 石垣 喜幸『みんなの歌がこだまする』@石巻・旧観慶丸商店

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

もーちゃんこと石垣喜幸さんが宮城でライヴをする!それも東日本大震災から7年目の3月11日に!数ヶ月前にこの告知を見た時に「これは行かなきゃ!」とほぼ即決しました。ただ正直に告白すると、その即決した大きな要素となったのが会場です。調べてみたら旧観慶丸商店は80年前に建てられた元百貨店で、今は市の文化財として保存されているイベントも開催できる施設という事でアルコールNG。という事は酔って騒ぐ人も無く音楽に集中する事ができるのではないかという下心が働いたのです。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

早々に予約を済ませたものの、その後徐々に「この3月11日という日に被災地で行われる地元の方々主体のライヴに、自分たちのような他所者が所詮オッカケで行ってしまっていいのかな?」という想いが去来してきました。そんな頃にまるでそれを見越したかのように主催者の方から予約完了のメールを頂き、御礼と共に自分の想いをありのままにお伝えする返信をしました。折り返し頂いたご丁寧なメールには、前に向かって歩いている石巻にぜひいらして、美味しい魚を食べてライヴを楽しんでくださいという自分の中のモヤモヤを晴らしてくださる様な言葉が綴れていました。もちろん辛く大変な経験をされた事は間違いないのですが、被災地だからと言って、言葉は悪いかもしれませんが腫れものに触るような接し方は違うのではないかと思うようになり、それならば短い時間でも石巻の町とライヴを楽しもうと決めたのです。震災翌年の5月にこの町を訪れた時は仙台からの仙石線は一部区間がまだバス代行となっていたのですが、今回は高台に新たに敷設された線路を一直線に石巻へ向かいました。6年ぶりに降り立った石巻は日曜の昼下がりの静けさに包まれていました。駅前にある市役所に献花場が設けれており、そこで2時46分を迎え黙祷。さぁ、ここからは楽しもうと海鮮丼を食べ、お土産を買い、会場に向かったのです。旧観慶丸商店は渋い佇まいの建物で、内部は鉄骨補強された木造で優しい音が聴こえそうです。会場を埋めたお客さんは年齢層も高く、はじめてもーちゃんの歌に接する方が多いようです。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

開演時間を少し回った頃、サポートキーボードの高嶺史さんと共に現れたもーちゃん。ギターと鍵盤の音が優しく心地よく響き「ふわり ふわり...」と1曲目の「タイムトラベル」の歌声が余計な雑音のいっさいしない場内をまるで包み込むかのように届いてきました。ただただうっとりしちゃいました。MCを挟んで軽快な「都バス」、そしてこの日のために手作りで仕上げて来たというCD「あいのうた」に収録されている「中央線」と続くと、もうすっかり場内はもーちゃんの世界に引きずり込まれていました。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

震災のあとこの町のラジオでデビュー曲「見上げれば」が流れていた事がきっかけとなり、よくライヴをしていた東京の沖縄料理店が炊き出しに行くのに同行し、石巻の仮説住宅の集会所などにこの歌を届けに来たというもーちゃん。「遠き故郷の優しい月明かり 思いは一つ 幸せを全ての人々へ 見上げれば空はある 見下ろせば海もある 悲しみは抱きしめて歩き出す 幼き命よ」この歌詞が今夜は特別なものとして響きます。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

一部の最後は出会った人々の縁の大切さを歌った「結の風」です。今宵こうして自分がこの場所にいる事も全てこの「結(ゆい)」があっての事なんだよなぁと感謝する気持ちで聴き入りました。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

休憩時間には、まだ前半しか終わっていないのに妻とふたり来て良かったねともう興奮状態で、その高揚を表の空気で一旦鎮めて後半に臨みました。赤いシャツに着替えて登場したもーちゃん、まずはしっとりと「悲しみのない世界」でスタートです。改めてこの人の大きな魅力である優しくなおかつ力強い説得力のある声に脱帽です。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

そして同じく魅力である歌詞は気がつくとそっと寄り添っていてくれて、時には肩を抱きしめてくれるような包容力に溢れいます。そんな魅力全開の「10年」「光」とおなじみの曲が続き、うっとりモードに再突入です。ギターを置き高嶺さんの鍵盤に乗せ歌った「愛のうた」はさらにその魅力が凝縮されたかのような曲でした。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

そして今夜どうしても聴きたかった曲「こだま」です。昨日行ったサッカーの試合が行われたスタジアムで、選手たちが並んで募金活動をしていたのですが、遠巻きにスマホで写真を撮るだけの人も多く、その時脳裏にはこの曲の歌詞の一部
深く大きな絆は いったい何処へ置き忘れたの
どんな時でも思いは一つ 未来に命を咲かせましょう
が流れてきました。
どこにいても大丈夫 あなたの側には私がいる
涙の降りそそぐこの世界に あなたの歌がこだまする
悲しみの降りそそぐこの世界に あなたの愛がこだまする
ライヴでいつ聴いても心がさざめき立つ曲なのですが、今宵はいつにも増して深く深く入ってきました。そしてこの曲の、音楽の持つチカラを痛感して震える思いでした。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

余韻にぼーっとなっていると続いてはコーラスで全員参加型の「海へ行こう」でみんなを笑顔いっぱいにしてくれます。途中離島ネタや地元ネタも盛り込むもーちゃんの絶妙なトークとハッピーな曲調で、それまでおとなしい感じのお客さんも手拍子しながら一緒に歌っての盛り上がりとなりました。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

あっという間に最後の曲となってしまいましたが、選ばれた曲はこれまたもーちゃんワールドに包み込まれる名曲「思い出に残るのは」です。
春も夏も秋も冬も 僕がそばにいてあげる
このフレーズ、なんて心強いのだろう。ありきたりのラヴソングとして聴いてしまえばそれまでの歌詞なのですが、この声で歌われるとものすごい安心感を感じるのです。別に何かに打ち拉がれている訳でもない呑気なおじさんの自分でさえそう感じるのですから、もし心が折れそうな時にこの曲を聴いたらものすごい支えになるはずです。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

アンコールかなと思ったら、ここでお楽しみ抽選会タイム。チケットに記された番号で主催者の方の心のこもった手作りキャンドルや、高嶺さん、もーちゃんの持参したお土産が当たるのですが、持っている男なのかもーちゃんの持ってきた八重山焼きのお茶碗が当たっちゃいました。嬉しいやら申し訳ないやら。でもしっかりいただいてきました。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

そしてアンコール。NHK東日本大震災プロジェクトのテーマ曲「花は咲く」です。自分はサビの部分くらいしか知らなかったのですが、会場のみなさんは頭から一緒に歌われており恥ずかしさすら感じました。この曲、もーちゃんの声にあっていたなぁ。場内大合唱も相まってなんとも心温まる時間でした。

2018.3.11 石垣喜幸@石巻・旧観慶丸商店

こうして今夜のライヴは終了です。振り返ってみると「見上げれば」の曲紹介の時に震災の翌年石巻に来たと言うこと以外、特にこの日この場所を意識した話がある訳でも無く「慰霊」とか「被災」という言葉も無く進んでいったライヴでした。それでいながら、もーちゃんの歌と曲の持つチカラで特別な夜になっていたのです。今日に至るまで冒頭に書いたような心の葛藤があった自分は逆に驚かされました。そして逆に大きな事を学ぶ事ができた気がします。今夜会場に集まった方々はほとんどが地元の方で、大変な思いをされた事には違いないのですが、私たちが時々思い出したように「忘れない」とか「絆」とか言っているのはあくまでも他所の土地に住んでいるからなのであり、地元の方にしてみれば忘れるもなにもずっと継続している訳で、いつまでもこの街は「被災地」であるのではなく「故郷」であるのです。もーちゃんはこの地に励ましにやって来たのではなく、歌を届けに、想いを伝えに来たのです。歌でとなりに腰を下ろしてそっと肩を抱いて、笑顔を共有するために来たのです。「被災地で少しでも自分ができる事を」などと思った自分は、その思いを免罪符としつつもある意味線を引いていたのかもしれません。もーちゃんのライヴと、周りのお客さんの笑顔を見てそれを学ばせてもらいました。ライヴの素晴らしさはもちろんなのですが、その意味でも本当に「この日、この場所」に来れる事ができて良かったです。


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Posted by Ken2 at 23:59│Comments(0)
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