2018.6.22 ◎ターシ@Bar YAYA Ebisu
2018年06月22日/ ◎ターシ
2018.6.22 ◎ターシ このうえないLIVE!東京@Bar YAYA Ebisu

2ヵ月に一度、東京・恵比寿のバーで開催される◎ターシさんのライヴ。昨年末から行くようになって今回で4回目となり、会場に集う◎ターシ・マニアの方々ともだんだん顔見知りとなり挨拶を交わすまでになってきました。失礼ながら決して多い人数ではないのですが、僕にとってはそのじっくりと音楽に接することができる時間こそがこのバー・ライヴの魅力であり、たとえば家から歩いて数分のところに居酒屋さんがあり、そこで定期的にライヴがあっても宴会のBGM扱いのような喧噪の中で聴かなくてはならないのであれば足繁く通うことはないと思います。

2ヵ月前は日曜の開催で「サンデー・ナイト・バラード・ライヴ」となり、しっとりとした曲が多かったのですが、今夜は「パスポートもって」でスタートです。明るく爽やかな曲なのですが、アメリカ統治下の沖縄の少年がパスポートを手に2泊3日の船旅で東京、大阪にやってくるという歌詞で、◎ターシさんの世代だからこそ書ける曲であり、僕の中ではとても深く貴重な存在感のある曲です。

続いて梅雨の合間の今日にぴったりな、ひと足早く夏を感じさせてくれる「daydream」でウキウキさせてくれ、もう1曲挟んで数あるカヴァー・レパートリーからリチャード・マークスの「Now and Forever」へと続きます。ここのところちょっとネガティブ・モードに入っていて、こんな時はそんな歌詞の曲を作ろうと思い立ち、頭に出て来るネガティブなコトバを書きとめようとしたら浮かんでこなくて、結局ボキャブラリーが少ないなぁという思いでネガネガな気分になったという話がネガティブなのに妙におかしかったです。◎ターシさんのこういう話を聞いているととても哲学的で、常に物事を深く考えているのだなぁと思い、自分の浅はかさが恥ずかしくなります。妄想好きな点は同じなのになぁ。

ライヴで聴くうちにすでにお馴染みになったオリジナル曲「アルバム」に続いて、静かなギターのイントロで歌い始めたのは”ざわわ ざわわ ざわわ…”、そう「さとうきび畑」です。意外な曲が飛び出してびっくりしましたが、そうか明日は6月23日沖縄慰霊の日です。曲の途中ギターを爪弾きながらミュージシャン仲間の伊集タツヤさんがSNSに投稿していたのですが、慰霊の日はアメリカ兵、日本兵、沖縄住民、亡くなった全ての方を思い祈る日であるという話をされ、それが僕にとってはとても大きな意味を持つ話でした。慰霊の日というと沖縄戦で尊い生命を落とされた住民の方々の慰霊という意識があったのですが、それだけではなく味方も敵もなく犠牲になったすべての御霊を慰めるものなのですよね。僕の伯父は戦闘が終わる5日前に沖縄戦で戦死しており、その部隊の慰霊碑が糸満にあります。その場所を訪れるためにそもそも僕が沖縄と繋がったのであり、7年前に三十数年ぶりに訪れた際に慰霊碑から平和祈念公園へと行き、タクシーの運転手さんが僕がその存在すら知らなかった”平和の礎”の事を教えてくれ、伯父の名前もあるはずよーと一緒に探してくれたのです。見つけた時、その場にいる自分が途切れていた縦の線で繋がったかのような、なにかこう雷に打たれたような感覚となったのは今でも忘れられません。そしてこうして、伯父の名が一緒に刻まれていることがとてつもなくありがたかったのです。沖縄慰霊の日とはそういう広い心が根底にあるのだなと、今夜感謝の念を新たにしました。そこから流れるように続いた「花鳥風水」もまるでレクイエムのように響き、ここで短い休憩に入りました。

後半は「僕と空の間」「あかばなー」「細い三日月と満天の星」などのオリジナル曲が続きます。僕にとってはライヴでしか聴くことができない曲も多いのですが、聴くたびに違って響きます。◎ターシさんが語っていたのですがライヴで演奏する度に曲が磨かれて成長していくという事が実際にわかるような気がします。決して前回がダメだったというのではなく、回を重ねるごとに曲が魅力的になっていくのですから成長という言葉がぴったりに感じます。

そして2曲カヴァーが続いたのですが、まずは「Time After Time」。この曲はとても高いキーで歌われ、時々苦しそうに感じる事もあるのですが、今夜の声のコンディションはいつにも増して素晴らしく、続く「Can’t Help Falling in Love」は低音部から高音までもう鳥肌立つほどの美しさで、オジサンがオジサンにうっとりしちゃいました。

ここからはオリジナル曲で進みます。雪の札幌を歌った「SPK」、季節感を出そうねと「夏のモザイク」、僕にとっては初めて◎ターシさんのことを知った出会いの曲で一耳惚れした「じゅーしぃ食べたらいいさぁ」という流れに、安定の心地よさを感じます。前述のように同じ曲がセットインしても毎回違った響きをするので飽きることはありません。ソロでの弾き語りという事もあるのでしょうが、1曲1曲毎回その日だけのヴァージョンになっているかのようです。

そして「通学路」「いつも君がそばにいて」と昭和感漂う甘酸っぱい曲が並びましたが、とても好きな雰囲気です。ご本人はこういう曲は難しい、意外かもしれないけれど歌うのが恥ずかしくなると語っていましたが、聴いている昭和感満載の我々としては、その甘酸っぱい歌詞によって自分の青春時代に時間旅行へと連れて行ってもらっているような感覚になるのです。

この会場は22時には終演となっているので、あぁこれで最後だな、アンコールは無しだなとわかりやすくお客さんもそれを承知しており、それでも無理矢理1曲でも多く聴いた方がお得だというガツガツした感じがなくて好きなのですが、ちょうどあと1曲の時間となり◎ターシさんの選んだ曲は「ふくぎ」でした。これも多分毎回歌われている曲なのですが、今夜はいつもと大きく違って響きました。というのも今までこの曲の紹介のときには自宅の近くにフクギ並木があって、その実が落ちると臭いとか、それを餌にするリュウキュウオオコオモリがでかいなどという内容だったので、明るい曲だなぁくらいのイメージだったのですが、今夜の話は木を一本ずつ植えていく男の話に触れ、最初は周囲の人にバカにされていたものの何年もして大きな森になった時には人々の尊敬と感謝を集めたという昔話が大好きで、そこからの妄想でフクギの並木は各地にあるけれどあまり森はない。例えば嘉手納基地に、もし1本ずつフクギを植えていって、何年も何年もして広大な森となり、そこを歩くと遺跡のようにみんながその存在を忘れた軍の施設があったら楽しいなという思いで書いたという話を初めて聞いてからの演奏だったので、”アカズノトビラ”のような今まではどんな意味があるのだろうと思っていた、というよりも考えることさえないまま耳に入ってきていた歌詞にもその意味や整合性を見い出し、なるほどこういう内容の曲だったのかと合点がいったのです。もちろん歌詞に関してはそれぞれ聴く側がどう感じ何を思うかなのでしょうし、背景を説明されて逆に受け止め方が限定されてしまう場合もあるのですが、この曲に関してはわかった事でさらにしっかりと受け止められるようになったと思います。

こうして恒例のこのうえないLIVE!東京は終演しました。僕にとっては、◎ターシさん自身は特に想いを込めたとか、意識したということもないはずなのですが「慰霊の日」を意識し考えさせてもらえた特別なライヴになりました。そして毎回の事ながら、慌ただしい日常の生活の中で、2ヵ月に一度その音楽と歌声で肩のチカラをふっと抜いてくれるオトナの時間を持てた事に幸せを感じた夜でした。
2ヵ月に一度、東京・恵比寿のバーで開催される◎ターシさんのライヴ。昨年末から行くようになって今回で4回目となり、会場に集う◎ターシ・マニアの方々ともだんだん顔見知りとなり挨拶を交わすまでになってきました。失礼ながら決して多い人数ではないのですが、僕にとってはそのじっくりと音楽に接することができる時間こそがこのバー・ライヴの魅力であり、たとえば家から歩いて数分のところに居酒屋さんがあり、そこで定期的にライヴがあっても宴会のBGM扱いのような喧噪の中で聴かなくてはならないのであれば足繁く通うことはないと思います。
2ヵ月前は日曜の開催で「サンデー・ナイト・バラード・ライヴ」となり、しっとりとした曲が多かったのですが、今夜は「パスポートもって」でスタートです。明るく爽やかな曲なのですが、アメリカ統治下の沖縄の少年がパスポートを手に2泊3日の船旅で東京、大阪にやってくるという歌詞で、◎ターシさんの世代だからこそ書ける曲であり、僕の中ではとても深く貴重な存在感のある曲です。
続いて梅雨の合間の今日にぴったりな、ひと足早く夏を感じさせてくれる「daydream」でウキウキさせてくれ、もう1曲挟んで数あるカヴァー・レパートリーからリチャード・マークスの「Now and Forever」へと続きます。ここのところちょっとネガティブ・モードに入っていて、こんな時はそんな歌詞の曲を作ろうと思い立ち、頭に出て来るネガティブなコトバを書きとめようとしたら浮かんでこなくて、結局ボキャブラリーが少ないなぁという思いでネガネガな気分になったという話がネガティブなのに妙におかしかったです。◎ターシさんのこういう話を聞いているととても哲学的で、常に物事を深く考えているのだなぁと思い、自分の浅はかさが恥ずかしくなります。妄想好きな点は同じなのになぁ。
ライヴで聴くうちにすでにお馴染みになったオリジナル曲「アルバム」に続いて、静かなギターのイントロで歌い始めたのは”ざわわ ざわわ ざわわ…”、そう「さとうきび畑」です。意外な曲が飛び出してびっくりしましたが、そうか明日は6月23日沖縄慰霊の日です。曲の途中ギターを爪弾きながらミュージシャン仲間の伊集タツヤさんがSNSに投稿していたのですが、慰霊の日はアメリカ兵、日本兵、沖縄住民、亡くなった全ての方を思い祈る日であるという話をされ、それが僕にとってはとても大きな意味を持つ話でした。慰霊の日というと沖縄戦で尊い生命を落とされた住民の方々の慰霊という意識があったのですが、それだけではなく味方も敵もなく犠牲になったすべての御霊を慰めるものなのですよね。僕の伯父は戦闘が終わる5日前に沖縄戦で戦死しており、その部隊の慰霊碑が糸満にあります。その場所を訪れるためにそもそも僕が沖縄と繋がったのであり、7年前に三十数年ぶりに訪れた際に慰霊碑から平和祈念公園へと行き、タクシーの運転手さんが僕がその存在すら知らなかった”平和の礎”の事を教えてくれ、伯父の名前もあるはずよーと一緒に探してくれたのです。見つけた時、その場にいる自分が途切れていた縦の線で繋がったかのような、なにかこう雷に打たれたような感覚となったのは今でも忘れられません。そしてこうして、伯父の名が一緒に刻まれていることがとてつもなくありがたかったのです。沖縄慰霊の日とはそういう広い心が根底にあるのだなと、今夜感謝の念を新たにしました。そこから流れるように続いた「花鳥風水」もまるでレクイエムのように響き、ここで短い休憩に入りました。
後半は「僕と空の間」「あかばなー」「細い三日月と満天の星」などのオリジナル曲が続きます。僕にとってはライヴでしか聴くことができない曲も多いのですが、聴くたびに違って響きます。◎ターシさんが語っていたのですがライヴで演奏する度に曲が磨かれて成長していくという事が実際にわかるような気がします。決して前回がダメだったというのではなく、回を重ねるごとに曲が魅力的になっていくのですから成長という言葉がぴったりに感じます。
そして2曲カヴァーが続いたのですが、まずは「Time After Time」。この曲はとても高いキーで歌われ、時々苦しそうに感じる事もあるのですが、今夜の声のコンディションはいつにも増して素晴らしく、続く「Can’t Help Falling in Love」は低音部から高音までもう鳥肌立つほどの美しさで、オジサンがオジサンにうっとりしちゃいました。
ここからはオリジナル曲で進みます。雪の札幌を歌った「SPK」、季節感を出そうねと「夏のモザイク」、僕にとっては初めて◎ターシさんのことを知った出会いの曲で一耳惚れした「じゅーしぃ食べたらいいさぁ」という流れに、安定の心地よさを感じます。前述のように同じ曲がセットインしても毎回違った響きをするので飽きることはありません。ソロでの弾き語りという事もあるのでしょうが、1曲1曲毎回その日だけのヴァージョンになっているかのようです。
そして「通学路」「いつも君がそばにいて」と昭和感漂う甘酸っぱい曲が並びましたが、とても好きな雰囲気です。ご本人はこういう曲は難しい、意外かもしれないけれど歌うのが恥ずかしくなると語っていましたが、聴いている昭和感満載の我々としては、その甘酸っぱい歌詞によって自分の青春時代に時間旅行へと連れて行ってもらっているような感覚になるのです。
この会場は22時には終演となっているので、あぁこれで最後だな、アンコールは無しだなとわかりやすくお客さんもそれを承知しており、それでも無理矢理1曲でも多く聴いた方がお得だというガツガツした感じがなくて好きなのですが、ちょうどあと1曲の時間となり◎ターシさんの選んだ曲は「ふくぎ」でした。これも多分毎回歌われている曲なのですが、今夜はいつもと大きく違って響きました。というのも今までこの曲の紹介のときには自宅の近くにフクギ並木があって、その実が落ちると臭いとか、それを餌にするリュウキュウオオコオモリがでかいなどという内容だったので、明るい曲だなぁくらいのイメージだったのですが、今夜の話は木を一本ずつ植えていく男の話に触れ、最初は周囲の人にバカにされていたものの何年もして大きな森になった時には人々の尊敬と感謝を集めたという昔話が大好きで、そこからの妄想でフクギの並木は各地にあるけれどあまり森はない。例えば嘉手納基地に、もし1本ずつフクギを植えていって、何年も何年もして広大な森となり、そこを歩くと遺跡のようにみんながその存在を忘れた軍の施設があったら楽しいなという思いで書いたという話を初めて聞いてからの演奏だったので、”アカズノトビラ”のような今まではどんな意味があるのだろうと思っていた、というよりも考えることさえないまま耳に入ってきていた歌詞にもその意味や整合性を見い出し、なるほどこういう内容の曲だったのかと合点がいったのです。もちろん歌詞に関してはそれぞれ聴く側がどう感じ何を思うかなのでしょうし、背景を説明されて逆に受け止め方が限定されてしまう場合もあるのですが、この曲に関してはわかった事でさらにしっかりと受け止められるようになったと思います。
こうして恒例のこのうえないLIVE!東京は終演しました。僕にとっては、◎ターシさん自身は特に想いを込めたとか、意識したということもないはずなのですが「慰霊の日」を意識し考えさせてもらえた特別なライヴになりました。そして毎回の事ながら、慌ただしい日常の生活の中で、2ヵ月に一度その音楽と歌声で肩のチカラをふっと抜いてくれるオトナの時間を持てた事に幸せを感じた夜でした。
Posted by Ken2 at 23:59│Comments(0)