2017.11.18 比嘉真優子@Live & Shot.bar TARUMASSYU
2017年11月18日/ その他(沖縄)
2017.11.18 比嘉真優子@Live & Shot.bar TARUMASSYU

4日前に滞在していた那覇で、友達に口々に薦められた比嘉真優子さん。お名前は何度も拝見しているのですが、ネーネーズ時代に真優子さんと意識しないでライヴを見ていた以外、ソロとして聴いた事はないのです。ぜひライヴで聴いてみてよ、ホントに良いんだからと強く言われ、一応その場で東京でのライヴがあるか検索してみたところ…「あった…それも今週末」とあまりのタイミングに大爆笑。これはもう天意としか言えまいと早速お馴染みの西大井タルマッシュに予約を入れて、初めて聴く真優子さんライヴに駆けつけました。

冷え込む東京の夜に半袖姿でステージに登場した真優子さん。弾き始めた三線の音色にまずはびっくり。音が太いなぁと感じたのです。繊細とか細かいというのとは違うしっかりとした音色だったのです。そしてオープニングナンバー「蔵ぬぱな節」が唄い出され進むにつれ、早くも友達みんながこぞってオススメしてくれた理由がわかりました。すごい!素晴らしい!ざわざわと鳥肌が立って来るのを感じます。それも技巧的に作り出した歌声ではなく、彼女が生まれ持っているものが八重山の風によって磨かれた、そんな天然素材のような感じです。まだ20代と若い真優子さんなのですが、目を閉じるとまるで大ベテランの歌手の方の歌声のように響きます。初めに書いた「太い」と表現した三線の音色も、よく言われるあくまで「唄ありき」の伴奏楽器として位置付けられる三線が、この歌声を支えるためには「太い」音でないと支え切れないのではないかななどと考えて聴き惚れてしまいました。

一曲目の「蔵ぬぱな節」は別名「献上節」とも呼ばれており、調べてみたら400年ちょっと前に首里の王朝から派遣されていた役人さんに「そっちの土木工事の現況を歌にして報告しなさい」と王様から命令があり作った現場レポートのような曲との事で、続く「親廻りぅ節」はそんな役人さんを「名蔵から崎枝まで案内しましょーねー」という風に聞き覚えのある石垣島の地名がいくつも盛り込まれた曲で、この2曲の流れが楽しかったです。寒さを嘆きつつのご挨拶と合わせて、こどもの頃から民謡大会荒らしだった話になり、いわゆる「こうしなさい。こんなことしちゃダメよ。」と主に年下の者へ歌われる教訓歌「デンサー節」の大会があり、教訓歌なのになぜか「こどもの部」があったと言う話で場内大爆笑。そして唄われた「デンサー節」はしっとりとしていてこれまた素晴らしい。何度も生で耳にしているこの曲なのですが、大体は男性が唄うものだったので新鮮で、それこそ自分の娘でも何ら違和感ない年齢なのに、真優子さんが唄うと母親に諭さられているような感覚になる存在感があります。

八重山民謡のセットが続くのですが「小浜節」「崎山節」「川良山節」「桃里節」と足繁く新良幸人さん、大島保克さんのライヴに通い鍛え上げられているのでここらへんは守備範囲で、いっちょまえにお囃子入れたりしちゃう自分に驚いたりもしました。そんな八重山民謡の名曲を持ち前の歌声で引っ張って行く真優子さんの歌に、歌詞の意味は完全にはわかっていないのにしんみりしたり笑顔になったり切なくなったりするのですから、やはりすごい唄い手さんなのです。一部の最後は三線を置き何をするのかなと思ったら、流れてきたバック・トラックに乗ってオリジナルアルバムに収録されている「ヨーンの道」でした。ネーネーズやサンサナーのライヴではお馴染みだったこの方式ですが、ここのところご無沙汰だったので斬新でした。曲が終わった後にお客さんが思わず漏らした一言「歌声で金縛りにあうね」に妙な共感を覚えつつ休憩に突入です。

二部も同じくアルバム収録曲「恋西陽」で幕を開け、続いて三線を手に「うんじゅが情きどぅ頼まり」という流れで知名定男さんの作られた曲が続きます。病から復帰されて先日は古希のお祝いの会が行われたそうで、知名さんの病気の話をするだけでみるみる涙目になってしまった真優子さん。師と仰ぐ知名さんとの結び付きの深さを感じます。そのままコーナーは続き、お馴染みの「赤花」、そして「テーゲー」では場内大合唱です。

そして自分にとって今夜のライヴのハイライトとなった部分が始まりました。と言ってもはじめ真優子さんが「ではみなさんで一緒にゆんたしましょうか。」と言われた時には何をするのかさっぱりわからなかったのです。「ここを島の野原だと思って手拍子お願いしますね~」という話でやっと飲み込めました。お役人さんたちが宮廷楽器であった三線を弾いて歌った「節歌」に対して、庶民が手拍子に合わせて労働歌や恋の歌を唄った「ゆんた」や「じばら」と言う分類を読んだ事を思い出し、これからまさにそのゆんたをしようと言うのです。まずは真優子さんが「ゆんたしょーら」の冒頭部を手拍子に合わせて唄い、それは文字通り「さぁみんなで歌おうよ!一緒に歌おうよ!」と言う歌詞で始まりを告げ、そのままみんな知っている「安里屋ゆんた」へと続きます。もちろん八重山のコトバでのヴァージョンです。お囃子のマタハーリヌのタが上がる方です。お客さんみんなで手拍子して、お囃子唄ってととても良い雰囲気で、いにしえの時代に野良仕事や漁を終えて満天の星空のもと円座になり、集落一唄のうまい娘のリードで宴会が始まった気分です。そう言えば「安里屋ゆんた」に対して「安里屋節」もあって全然趣きが違うもんなぁ。今まで漠然と曲のタイトルの一部としてしか考えていなかった「ゆんた」と「節」の違いを、こうして体験として感じることができたのです。手拍子はそのままに三線を手にした真優子さんは「猫小」へ。この曲も「猫ゆんた」とも呼ばれるので手拍子だけで唄われていたのでしょうが、途中リズムが裏に入るのが難しいので今日は三線でになったようです。楽しいだけでなく、民謡と呼ばれる歌は決して背筋を伸ばして緊張感保ち聴くものではなく、庶民の娯楽であったと言う事も含めて、多くの感覚を実感させてもらえたゆんたコーナーでした。

そしてラストは再びオリジナルのナンバーで、幼い頃から離島での民謡大会に漁船で連れて行ってもらったというお父さんへの想い、そして真優子さんを育んできた石垣の自然への想いが詰まった「ドキュメント」を歌い上げて終了です。これ良い曲だったなぁ。唄い終え店外に出る真優子さん。いやいや半袖でって外は強い北風吹き荒ぶ気温7°Cですぜ!あまりに可哀想なんで早く呼び戻そうとアンコールを求める拍手も速い速い。そんな気持ちが通じたのかすぐに震えながら戻ってきてくれました。そしてアカペラで唄い始めた「とぅばらーま」の一節にまたまた鳥肌立ちました。高音域に伸びる声もキンキンした感じが皆無でとても自然に上がっていくのがすごいです。そこからバック・トラックが流されオリジナルの「新北風 (みーにし)」へと繋がっていきました。歌声だけで聴く者をこれだけ引き摺り込んでしまうのだから、やはりすごい!

こうして幕を閉じた真優子さんのライヴ。八重山民謡、知名定男さんのナンバー、そしてオリジナル曲とバラエティに富んだ内容でした。歌を、そして唄うことを大切にしていらっしゃるのだなぁという事がひしひしと伝わって来ましたし、「歌」の持つチカラを再認識したライヴでした。例えば自分達が三線の練習しようとすると、つい正しいところを押さえて指の運びを覚えようと弾くことだけに集中してしまい、弾けるようになったら唄を乗せればいいやと思いがちなのですが、教えて下さる方には同時に練習しなさいと何度も言われます。真優子さんのライヴを通して唄三線の「唄」の占める割合の重要性を痛感し、前述の「唄ありき」と言う言い方を妙に納得した夜でした。
4日前に滞在していた那覇で、友達に口々に薦められた比嘉真優子さん。お名前は何度も拝見しているのですが、ネーネーズ時代に真優子さんと意識しないでライヴを見ていた以外、ソロとして聴いた事はないのです。ぜひライヴで聴いてみてよ、ホントに良いんだからと強く言われ、一応その場で東京でのライヴがあるか検索してみたところ…「あった…それも今週末」とあまりのタイミングに大爆笑。これはもう天意としか言えまいと早速お馴染みの西大井タルマッシュに予約を入れて、初めて聴く真優子さんライヴに駆けつけました。
冷え込む東京の夜に半袖姿でステージに登場した真優子さん。弾き始めた三線の音色にまずはびっくり。音が太いなぁと感じたのです。繊細とか細かいというのとは違うしっかりとした音色だったのです。そしてオープニングナンバー「蔵ぬぱな節」が唄い出され進むにつれ、早くも友達みんながこぞってオススメしてくれた理由がわかりました。すごい!素晴らしい!ざわざわと鳥肌が立って来るのを感じます。それも技巧的に作り出した歌声ではなく、彼女が生まれ持っているものが八重山の風によって磨かれた、そんな天然素材のような感じです。まだ20代と若い真優子さんなのですが、目を閉じるとまるで大ベテランの歌手の方の歌声のように響きます。初めに書いた「太い」と表現した三線の音色も、よく言われるあくまで「唄ありき」の伴奏楽器として位置付けられる三線が、この歌声を支えるためには「太い」音でないと支え切れないのではないかななどと考えて聴き惚れてしまいました。
一曲目の「蔵ぬぱな節」は別名「献上節」とも呼ばれており、調べてみたら400年ちょっと前に首里の王朝から派遣されていた役人さんに「そっちの土木工事の現況を歌にして報告しなさい」と王様から命令があり作った現場レポートのような曲との事で、続く「親廻りぅ節」はそんな役人さんを「名蔵から崎枝まで案内しましょーねー」という風に聞き覚えのある石垣島の地名がいくつも盛り込まれた曲で、この2曲の流れが楽しかったです。寒さを嘆きつつのご挨拶と合わせて、こどもの頃から民謡大会荒らしだった話になり、いわゆる「こうしなさい。こんなことしちゃダメよ。」と主に年下の者へ歌われる教訓歌「デンサー節」の大会があり、教訓歌なのになぜか「こどもの部」があったと言う話で場内大爆笑。そして唄われた「デンサー節」はしっとりとしていてこれまた素晴らしい。何度も生で耳にしているこの曲なのですが、大体は男性が唄うものだったので新鮮で、それこそ自分の娘でも何ら違和感ない年齢なのに、真優子さんが唄うと母親に諭さられているような感覚になる存在感があります。
八重山民謡のセットが続くのですが「小浜節」「崎山節」「川良山節」「桃里節」と足繁く新良幸人さん、大島保克さんのライヴに通い鍛え上げられているのでここらへんは守備範囲で、いっちょまえにお囃子入れたりしちゃう自分に驚いたりもしました。そんな八重山民謡の名曲を持ち前の歌声で引っ張って行く真優子さんの歌に、歌詞の意味は完全にはわかっていないのにしんみりしたり笑顔になったり切なくなったりするのですから、やはりすごい唄い手さんなのです。一部の最後は三線を置き何をするのかなと思ったら、流れてきたバック・トラックに乗ってオリジナルアルバムに収録されている「ヨーンの道」でした。ネーネーズやサンサナーのライヴではお馴染みだったこの方式ですが、ここのところご無沙汰だったので斬新でした。曲が終わった後にお客さんが思わず漏らした一言「歌声で金縛りにあうね」に妙な共感を覚えつつ休憩に突入です。
二部も同じくアルバム収録曲「恋西陽」で幕を開け、続いて三線を手に「うんじゅが情きどぅ頼まり」という流れで知名定男さんの作られた曲が続きます。病から復帰されて先日は古希のお祝いの会が行われたそうで、知名さんの病気の話をするだけでみるみる涙目になってしまった真優子さん。師と仰ぐ知名さんとの結び付きの深さを感じます。そのままコーナーは続き、お馴染みの「赤花」、そして「テーゲー」では場内大合唱です。
そして自分にとって今夜のライヴのハイライトとなった部分が始まりました。と言ってもはじめ真優子さんが「ではみなさんで一緒にゆんたしましょうか。」と言われた時には何をするのかさっぱりわからなかったのです。「ここを島の野原だと思って手拍子お願いしますね~」という話でやっと飲み込めました。お役人さんたちが宮廷楽器であった三線を弾いて歌った「節歌」に対して、庶民が手拍子に合わせて労働歌や恋の歌を唄った「ゆんた」や「じばら」と言う分類を読んだ事を思い出し、これからまさにそのゆんたをしようと言うのです。まずは真優子さんが「ゆんたしょーら」の冒頭部を手拍子に合わせて唄い、それは文字通り「さぁみんなで歌おうよ!一緒に歌おうよ!」と言う歌詞で始まりを告げ、そのままみんな知っている「安里屋ゆんた」へと続きます。もちろん八重山のコトバでのヴァージョンです。お囃子のマタハーリヌのタが上がる方です。お客さんみんなで手拍子して、お囃子唄ってととても良い雰囲気で、いにしえの時代に野良仕事や漁を終えて満天の星空のもと円座になり、集落一唄のうまい娘のリードで宴会が始まった気分です。そう言えば「安里屋ゆんた」に対して「安里屋節」もあって全然趣きが違うもんなぁ。今まで漠然と曲のタイトルの一部としてしか考えていなかった「ゆんた」と「節」の違いを、こうして体験として感じることができたのです。手拍子はそのままに三線を手にした真優子さんは「猫小」へ。この曲も「猫ゆんた」とも呼ばれるので手拍子だけで唄われていたのでしょうが、途中リズムが裏に入るのが難しいので今日は三線でになったようです。楽しいだけでなく、民謡と呼ばれる歌は決して背筋を伸ばして緊張感保ち聴くものではなく、庶民の娯楽であったと言う事も含めて、多くの感覚を実感させてもらえたゆんたコーナーでした。
そしてラストは再びオリジナルのナンバーで、幼い頃から離島での民謡大会に漁船で連れて行ってもらったというお父さんへの想い、そして真優子さんを育んできた石垣の自然への想いが詰まった「ドキュメント」を歌い上げて終了です。これ良い曲だったなぁ。唄い終え店外に出る真優子さん。いやいや半袖でって外は強い北風吹き荒ぶ気温7°Cですぜ!あまりに可哀想なんで早く呼び戻そうとアンコールを求める拍手も速い速い。そんな気持ちが通じたのかすぐに震えながら戻ってきてくれました。そしてアカペラで唄い始めた「とぅばらーま」の一節にまたまた鳥肌立ちました。高音域に伸びる声もキンキンした感じが皆無でとても自然に上がっていくのがすごいです。そこからバック・トラックが流されオリジナルの「新北風 (みーにし)」へと繋がっていきました。歌声だけで聴く者をこれだけ引き摺り込んでしまうのだから、やはりすごい!
こうして幕を閉じた真優子さんのライヴ。八重山民謡、知名定男さんのナンバー、そしてオリジナル曲とバラエティに富んだ内容でした。歌を、そして唄うことを大切にしていらっしゃるのだなぁという事がひしひしと伝わって来ましたし、「歌」の持つチカラを再認識したライヴでした。例えば自分達が三線の練習しようとすると、つい正しいところを押さえて指の運びを覚えようと弾くことだけに集中してしまい、弾けるようになったら唄を乗せればいいやと思いがちなのですが、教えて下さる方には同時に練習しなさいと何度も言われます。真優子さんのライヴを通して唄三線の「唄」の占める割合の重要性を痛感し、前述の「唄ありき」と言う言い方を妙に納得した夜でした。
Posted by Ken2 at 23:59│Comments(0)