2017.1.17 Howard Jones @ Billboard Live Tokyo
2017年01月17日/ 洋楽
2017.1.17 Howard Jones~BACK TO 80s ALL HITS~ @ Billboard Live Tokyo
衝撃的な出会いでした。80年代に入り、隆盛を極めていたエレクトリック・ミュージックは平たく言ってしまえば無機質な音に低いヴォーカルという陰影の漂うものが多かったのですが、1983年にラジオ番組「全英TOP20」から流れてきた新人アーティストのデビューシングルのイントロは、打ち込みのリズムに続いてウキウキするようなポップなメロディーが流れてきました。一発で自分の心を掴んだこの曲こそハワード・ジョーンズの「New Song」でした。その後MTVで見たPVはステージには彼ひとりがシンセサイザーを奏で歌い、パントマイマーが彩りを加えるという斬新なもので、シンセ・ポップという新しい音楽の形を見せつけられた気がしました。何度か来日公演も果たし、武道館でのコンサートや、ピーター・ガブリエルらとともに神宮球場で開催したチャリティー・コンサートでライヴを見る事ができました。デビューから34年、今も精力的に創作活動とコンサート・ツアーを続けるHoJoが、一昨年発表した新譜「エンゲイジ」を引っ提げて東京に戻って来てくれたのです。
場内暗転すると、まずはシンセとシンセドラムのふたりのサポートメンバーが登場し、背後のスクリーンの映像とシンクロして演奏し始めると、KORGのリモート・キーボードを演奏しながらHoJoが客席から登場。Tシャツ、スタジャン、ジーンズ姿と若々しいいでたちです。オープニングはデビューアルバムからの4枚目のシングル「Pearl in the Shell (パールと貝がら)」。生音でドラムが入る分、全体の音がしっかりしています。HoJoはリモート・キーボードを提げて、ステージを端から端まで動きながらお客さんを盛り上げていきます。嬉しそうに手を振り返すアラフィフのお客さんも微笑ましい。スマホの翻訳機能を見ながら日本語での挨拶から89年のヒット曲「The Prisoner」、そして最新作からの曲と続きます。新しい曲も彼らしいポップなメロディーラインで、往年の作品と比べて遜色も違和感も感じません。
そして早くもその時を迎えました。HoJoの「次は僕のお気に入りのナンバーで、ライヴ・エイドでも歌ったよね。」という紹介と共に、浮遊感溢れるシンセのソロから囁くようなドラムのリズム、そしてフルートの音色のイントロ、名盤デビュー・アルバム「Human's Lib」からのシングル曲「Hide & Seek (かくれんぼ)」です。ライヴ・エイドでもそうでしたが、この名曲はライヴで演奏される時にはピアノだけで弾き語りされる事が多く、それでも名曲には違いないのですが、やはりこの曲の持つ魅力はこうして月がゆっくりと昇っていくような流れがあってこそなのです。もううっとりどころか鳥肌立つほどの時間で、4曲目にしてこれが今夜のピークなのではないかと思ったほどでした。
そこから再び最新作から2曲続けて演奏され、その後の後半戦はもうイントロ・どん!状態のグレイテスト・ヒッツに突入です。まずはセカンド・アルバムから最後にシングル・カットされた際、アルバムとはヴァージョンが異なり、フィル・コリンズとヒュー・パジャムのプロデュースにより再録音され、コリンズ自身もバック・ヴォーカルで参加していた「No One Is to Blame (悲しき願い)」で、シングル・ヴァージョンでの演奏です。この曲もぜひ聴きたかった曲だったので満面笑みで聴き入ってしまいました。怒涛のヒット曲往復ビンタはセカンド・アルバムのリード・シングル「Like to Get to Know You Well (君を知りたくて)」、89年のヒット「Everlasting Love」、85年の「Life in One Day (1日の生命)」と続きます。決してヒット曲だから良いというのではなく、それだけお馴染みのナンバーがたくさんあり、そのどれもに聴衆の想いも詰まっているからこそ、こうして生で接すると気分が高揚するのです。またその個々の想いが詰まっている曲を、これが今の姿なんだみたいに原型を崩されたアレンジされるとちょっとガッカリなのですが、HoJoはきちんとオリジナルの形を残してプレイしてくれているので、こうして満喫できるのです。
そして日本でも愛されている曲「What Is Love?」のイントロは数音でもう場内大歓声に包まれ、サビの部分は大合唱でした。先ほど書いた通り「Hide & Seek」で今夜のピークだろうと感じたのですが、それを上回る頂点の時がまだまだあったのが次の「New Song」でした。最初導入部のようにキーボードの伴奏で頭の部分が♪I’ve been waiting for so long~ to come to Tokyo and sing this songなんて嬉しい歌詞で歌われたのですが、いやいやこのままじゃダメだよ!ちゃんとイントロから始めてよ!と思っているとトントン トトッ トン、トントン トトッ トン、♪タンタタン タタン タタンタタン…と、そうこれこれ!こうこなくちゃ!!とオリジナルのイントロできちんと仕切り直されたからもう大興奮です。1階フロアのお客さんは総立ちでのりまくり、コーラスのフッフッフ!は大合唱でした。盛り上がり切ったままコーラス部分の練習をしてからラストの「Things Can Only Get Better」に突入です。この曲の後半はテクノアレンジされていて、さらにHoJoがお客さんを煽り1階はダンスフロアと化していました。アンコールは無く、これでおよそ90分のセットは終了です。
HoJoはすぐれたメロディー・メイカーです。新しいアルバムの曲をも含めて、ポップでさらっと聴く者の耳に入ってきて、なおかつ心に残るポップなメロディーを生み出し続けています。この天からのギフトを音楽という形にする際、そのスタートに当たりバンドという形態ではなく、その時代の先端技術であったシンセサイザー、リズムマシーン、シーケンサーという機材を駆使して表現したのでしょう。それで80年代中盤のミュージック・シーンにおいて確固たる地位を築いたのですが、新しい音楽の形ではあったもののその根底には常にこのメロディー・メイカー、音楽職人としてのチカラとセンスがあり、時代が変わりヒット・チャートの常連ではなくなってもこうして聴く者を惹きつける音を、ライヴを届け続けられているのだと思います。今夜散りばめられた80年代のヒット曲の数々も懐かしいという感覚ではなかったのも、普段意識して聴く事は無くなっていても30年ほど前に出会って良い曲として心に刻まれてから自分の中で綿々と存在しているからなのではないでしょうか。
音楽の持つチカラってすごいなぁと、単純で当たり前の事を改めて痛感した夜でした。
['84年プロモーションで初来日した際、レコード屋に行こうと歩いていた原宿・竹下通りでHoJoに遭遇し、他に持っているものがなくポケットに入っていた友人からの手紙の封筒にもらった思い出のサイン]
■ SETLIST ■
01 Pearl in the Shell
02 The Prisoner
03 Eagle Will Fly Again
04 Hide & Seek
05 Joy
06 The Human Touch
07 No One Is to Blame
08 Like to Get to Know You Well
09 Everlasting Love
10 Life in One Day
11 What Is Love?
12 New Song
13 Things Can Only Get Better
衝撃的な出会いでした。80年代に入り、隆盛を極めていたエレクトリック・ミュージックは平たく言ってしまえば無機質な音に低いヴォーカルという陰影の漂うものが多かったのですが、1983年にラジオ番組「全英TOP20」から流れてきた新人アーティストのデビューシングルのイントロは、打ち込みのリズムに続いてウキウキするようなポップなメロディーが流れてきました。一発で自分の心を掴んだこの曲こそハワード・ジョーンズの「New Song」でした。その後MTVで見たPVはステージには彼ひとりがシンセサイザーを奏で歌い、パントマイマーが彩りを加えるという斬新なもので、シンセ・ポップという新しい音楽の形を見せつけられた気がしました。何度か来日公演も果たし、武道館でのコンサートや、ピーター・ガブリエルらとともに神宮球場で開催したチャリティー・コンサートでライヴを見る事ができました。デビューから34年、今も精力的に創作活動とコンサート・ツアーを続けるHoJoが、一昨年発表した新譜「エンゲイジ」を引っ提げて東京に戻って来てくれたのです。
場内暗転すると、まずはシンセとシンセドラムのふたりのサポートメンバーが登場し、背後のスクリーンの映像とシンクロして演奏し始めると、KORGのリモート・キーボードを演奏しながらHoJoが客席から登場。Tシャツ、スタジャン、ジーンズ姿と若々しいいでたちです。オープニングはデビューアルバムからの4枚目のシングル「Pearl in the Shell (パールと貝がら)」。生音でドラムが入る分、全体の音がしっかりしています。HoJoはリモート・キーボードを提げて、ステージを端から端まで動きながらお客さんを盛り上げていきます。嬉しそうに手を振り返すアラフィフのお客さんも微笑ましい。スマホの翻訳機能を見ながら日本語での挨拶から89年のヒット曲「The Prisoner」、そして最新作からの曲と続きます。新しい曲も彼らしいポップなメロディーラインで、往年の作品と比べて遜色も違和感も感じません。
そして早くもその時を迎えました。HoJoの「次は僕のお気に入りのナンバーで、ライヴ・エイドでも歌ったよね。」という紹介と共に、浮遊感溢れるシンセのソロから囁くようなドラムのリズム、そしてフルートの音色のイントロ、名盤デビュー・アルバム「Human's Lib」からのシングル曲「Hide & Seek (かくれんぼ)」です。ライヴ・エイドでもそうでしたが、この名曲はライヴで演奏される時にはピアノだけで弾き語りされる事が多く、それでも名曲には違いないのですが、やはりこの曲の持つ魅力はこうして月がゆっくりと昇っていくような流れがあってこそなのです。もううっとりどころか鳥肌立つほどの時間で、4曲目にしてこれが今夜のピークなのではないかと思ったほどでした。
そこから再び最新作から2曲続けて演奏され、その後の後半戦はもうイントロ・どん!状態のグレイテスト・ヒッツに突入です。まずはセカンド・アルバムから最後にシングル・カットされた際、アルバムとはヴァージョンが異なり、フィル・コリンズとヒュー・パジャムのプロデュースにより再録音され、コリンズ自身もバック・ヴォーカルで参加していた「No One Is to Blame (悲しき願い)」で、シングル・ヴァージョンでの演奏です。この曲もぜひ聴きたかった曲だったので満面笑みで聴き入ってしまいました。怒涛のヒット曲往復ビンタはセカンド・アルバムのリード・シングル「Like to Get to Know You Well (君を知りたくて)」、89年のヒット「Everlasting Love」、85年の「Life in One Day (1日の生命)」と続きます。決してヒット曲だから良いというのではなく、それだけお馴染みのナンバーがたくさんあり、そのどれもに聴衆の想いも詰まっているからこそ、こうして生で接すると気分が高揚するのです。またその個々の想いが詰まっている曲を、これが今の姿なんだみたいに原型を崩されたアレンジされるとちょっとガッカリなのですが、HoJoはきちんとオリジナルの形を残してプレイしてくれているので、こうして満喫できるのです。
そして日本でも愛されている曲「What Is Love?」のイントロは数音でもう場内大歓声に包まれ、サビの部分は大合唱でした。先ほど書いた通り「Hide & Seek」で今夜のピークだろうと感じたのですが、それを上回る頂点の時がまだまだあったのが次の「New Song」でした。最初導入部のようにキーボードの伴奏で頭の部分が♪I’ve been waiting for so long~ to come to Tokyo and sing this songなんて嬉しい歌詞で歌われたのですが、いやいやこのままじゃダメだよ!ちゃんとイントロから始めてよ!と思っているとトントン トトッ トン、トントン トトッ トン、♪タンタタン タタン タタンタタン…と、そうこれこれ!こうこなくちゃ!!とオリジナルのイントロできちんと仕切り直されたからもう大興奮です。1階フロアのお客さんは総立ちでのりまくり、コーラスのフッフッフ!は大合唱でした。盛り上がり切ったままコーラス部分の練習をしてからラストの「Things Can Only Get Better」に突入です。この曲の後半はテクノアレンジされていて、さらにHoJoがお客さんを煽り1階はダンスフロアと化していました。アンコールは無く、これでおよそ90分のセットは終了です。
HoJoはすぐれたメロディー・メイカーです。新しいアルバムの曲をも含めて、ポップでさらっと聴く者の耳に入ってきて、なおかつ心に残るポップなメロディーを生み出し続けています。この天からのギフトを音楽という形にする際、そのスタートに当たりバンドという形態ではなく、その時代の先端技術であったシンセサイザー、リズムマシーン、シーケンサーという機材を駆使して表現したのでしょう。それで80年代中盤のミュージック・シーンにおいて確固たる地位を築いたのですが、新しい音楽の形ではあったもののその根底には常にこのメロディー・メイカー、音楽職人としてのチカラとセンスがあり、時代が変わりヒット・チャートの常連ではなくなってもこうして聴く者を惹きつける音を、ライヴを届け続けられているのだと思います。今夜散りばめられた80年代のヒット曲の数々も懐かしいという感覚ではなかったのも、普段意識して聴く事は無くなっていても30年ほど前に出会って良い曲として心に刻まれてから自分の中で綿々と存在しているからなのではないでしょうか。
音楽の持つチカラってすごいなぁと、単純で当たり前の事を改めて痛感した夜でした。
['84年プロモーションで初来日した際、レコード屋に行こうと歩いていた原宿・竹下通りでHoJoに遭遇し、他に持っているものがなくポケットに入っていた友人からの手紙の封筒にもらった思い出のサイン]
■ SETLIST ■
01 Pearl in the Shell
02 The Prisoner
03 Eagle Will Fly Again
04 Hide & Seek
05 Joy
06 The Human Touch
07 No One Is to Blame
08 Like to Get to Know You Well
09 Everlasting Love
10 Life in One Day
11 What Is Love?
12 New Song
13 Things Can Only Get Better
Posted by Ken2 at 23:59│Comments(0)