2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

2016年09月06日/ 洋楽

2016.9.6 Elvis Costello "Detour"@人見記念講堂

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

70年代のパンクムーヴメントの中登場してきたコステロ。当時は「怒れる若者」みたいなキャッチコピーでこのムーヴメントの中核のように扱われていたけれど、他のパンクスたちがスリーコードに乗せて不平不満を勢い任せで吐き出しているのに対し、根底に流れるポップセンスと知性が光るシニカルな歌詞で一線を画していたと思う。40年以上に渡り第一線で活動を続けながらも、自分にとってはあまりにも抽出しが多すぎて、その時コステロがどんな音楽をやっているのかが把握できずに、デビュー翌年の78年以来頻繁に来日をしているのだけど今までライヴを見る機会がなかったのです。今回の"Detour (まわり道)"と題されたツアーの告知には「今回のステージはエルビス・コステロの人生を体験できる貴重な機会であり、長年のファンにとっては垂涎の的となることでしょう。」と記されており、さらにどうしても一度はライヴで聴きたい曲があるので、これは良い機会に違いないと思いチケットを購入してこの日を迎えました。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

会場に入り席につくと、ちょっと横だけどなかなかの良席。ステージには大型のテレビのセットが置かれ、懐かしいPVが流されている。中央にはたくさんのギターが並び、左側にはグランドピアノ、右側には座っての弾き語り用なのか椅子のセットが用意されている。18:30を過ぎた頃、オープニングアクトであり、近年コステロとよく共演しているアトランタの姉妹ユニットLarkin Poeの登場。エレキギターとスティールギターのふたり組で、力強いヴォーカルが南部の香りのするヘヴィな音にのって、初めて耳にしたサウンドなのにぐいぐい引き込まれていきました。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

30分ほどのセットが終わり休憩のあと、19:20ころに客電が落ちいよいよスタートです。まずはテレビセットのスクリーンに"Monkey To Man"のPVが映し出され、ここからどう始まるのだろうとワクワクしていたら、フルコーラスの上映が終わると普通にひょっこり手を振りながら出てきた。アコギを抱えいきなり歌い出した"Hurry Down Doomsday (The Bugs Are Taking Over)"。スクリーンにイメージ映像が流れる前で、照明も当たらず暗い中、たったひとりで…それだけのことなんだけど鳥肌立つほどかっこいい!ロッカーとしてだけでなく、還暦過ぎた男の醸し出すかっこよさのオーラがハンパないのです。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

「このツアーはまわり道と名づけているんだけど、なぜかというと誰かにツアーはどこに行くんだと聞かれると決まってDetourだよって答えているからなんだ。」という話から、初来日の時の話になり、お客さんも集まらず学生服を買ってトラックの荷台にセット組んで銀座の路上でゲリラライヴを敢行して、レコードを道行く人に配ったのだけどほとんど手に取ってもらえなかった上に警察に補導された懐かしいエピソードを披露し、その時の写真が映し出され歌われたのは"Accidents Will Happen"!! もうたまりません、この流れ‼︎

リリース当時、チャールズ皇太子とダイアナ妃のそっくりさんが演じるPVが話題となったスマッシュヒットの"Everyday I Write The Book"。ポップなこの曲が歌い始めてしばらくするまでわからなかったブルース風なアレンジが施されていてびっくり。普段ライヴでアレンジを変えられると拒否反応出てしまうのですが、ここまで変わってこの渋さはアリです。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

ここで左側のピアノに向かったコステロ。もうイントロで本日2度目の鳥肌がたった"Shipbuilding"。83年のフォークランド紛争の時に書かれたこの曲を聴くとき、目の前に広がる光景がモノクロに感じられたほど曲に引き込まれていきました。数曲ピアノでのセットが続き、ミュージカルのために書いたという紹介と共に歌われた曲が、初めて聴く人がほとんどのはずなのに、曲の良さと熱演で聴衆の心を鷲掴みで自分も含めて割れんばかりの拍手でした。一旦ピアノを離れたものの拍手が鳴りやまず、気をよくしたのか「じゃあもう1曲やっちゃうか」と同じミュージカルのものと思われる曲が披露されたほどです。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

次は反対側の椅子に座っての弾き語りセットへ。"She"や"Watching The Detectives"などをサラッと肩に力の入らない感じで聴かせてくれました。ステージ中央に戻りスタンディングで"I Want You"をじっくり聴かせてくれていたのですが、突然ギターのコードを引き抜いたと思ったら客席に降りてきて生音生歌で続けながら、1階だけで1500席ほどある広さの会場を一番後ろまで歩いて行き場内大喜びです。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

ステージに戻って来た後はオープニングアクトをも務めたLarkin Poeをサポートに迎えてのセットです。ソロライヴなんだから全編ひとりでとか思っていたのですが、音の厚みも増し新旧取り混ぜたナンバーにミュージカルの新曲も加わりバラエティに富んだ選曲でぐんぐんと上り詰めていきました。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

アンコールはスクリーンが開け放たれたテレビの中に登場し、エレキ1本での"Alison"です!そうだ、自分はこの曲が一度生で聴いてみたかったっんだ。ここまでのコンサート自体が何を演ったか演ってないかなどということを考えないくらいトータルとして素晴らしい内容だったので、この曲の事を聴くまで全く失念していたのです。それでもこの3分ほどの曲の素晴らしい事といったら‼︎ 初めて耳にしてからすでに40年近くの月日が流れてしまったものの、やっとこうして生で聴く事ができたという喜びが押し寄せてきました。その余韻から一気に"Pump It Up"。たったひとりのステージですが、背後にジ・アトラクションズ面々が見えるかのようなかっこよさです。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

再び登場してサッとピアノのスツールに腰掛け3曲。特に最後の"My Funny Valentine"の絶品さにはもう我慢できず立ち上がってスタンディングオベーションしてしまったほどです。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

再びLarkin Poeが呼び込まれ演奏されたのは、ニック・ロウ先生のナンバーでアメリカ盤の"Armed Forces"だけ置き換えられた" (What's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding?"。まさかこの曲をシメに持ってくるとは‼︎ほとんど50代以上のお客さんも総立ちでノリノリです。「痛みや苦しみ不幸がはびこり、すべての希望は枯れてしまったのかと感じる時いつも知りたいと思う。平和・愛・相互理解を考えることの一体どこがおかしいっていうのか?」この曲を最後に持って来たのは、伝えたいメッセージは40年経っても変わっていないという事なのかな。基本的なことだしね。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

膨らんでいた期待をはるかに上回るライヴが終演したのは21:40。コステロだけでも29曲2時間20分の濃密さ‼︎ それもパワーポップ、パブロックからジャズバラードまでと幅広いレパートリーを余すことなく聴かせてくれました。この幅広さを最初に抽出しが多すぎてフォローしきれないと表現しましたが、こうしてライヴで一気に耳にすると曲調こそ違いこそすれ、全てにピンと通っている筋はコステロ以外の何物でもなく、ポップセンスと知性が詰まった作品たちである事は揺るぎないものなのでした。それをいろいろなスタイルでまとめ上げて形にしてゆくコステロは、ジャンルどうこうなんていうどうでもいい後付けでひとつの括りに収めようとせず、全てを包括してエルビス・コステロという稀代の「音楽家」だということなのでしょうね。
この事がやっとわかるなんて、どうやら自分が一番の「まわり道」していたようです。

2016.9.6 Elvis Costello @人見記念講堂

- SETLIST -
* Monkey To Man (video)
01. Hurry Down Doomsday (The Bugs Are Taking Over)
02. They're Not Laughing At Me Now
03. Accidents Will Happen
04. Ascension Day
05. Church Underground
06. Stella Hurt
07. Everyday I Write The Book
08. Shipbuilding
09. Deep Dark Truthful Mirror
10. A Face In The Crowd
11. 不明
12. Walkin' My Baby Back Home
13. Ghost Train
14. She
15. Watching The Detectives
16. I Want You
17. Blame It On Cain
18. Nothing Clings Like Ivy
19. Clown Strike
20. Burn The Paper Down To Ash
21. Vitajex
22. That's Not The Part of Him You're Leaving
23. American Mirror
-encore-
24. Alison
25. Pump It Up
-encore
26. Side By Side
27. Almost Blue
28. My Funny Valentine
29. (what's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding?


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Posted by Ken2 at 23:59│Comments(0)
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