2016.6.26 sala - saji@信州上田・いちゃりBar Nomado

Ken2

2016年06月26日 23:59

2016.6.26 sala - saji Live Voice 2016 【del Viento】Tour "Extra"@信州上田・いちゃりBar Nomado



2日前にデビュー5周年を迎えたsala-saji。今日のライヴは期せずしてその成り立ちから出逢い、現在そして明日までをも音で伝えてくれるライヴとなりました。



聴かず嫌いで敬遠していたインストゥルメンタル・ミュージックの扉を開いてくれた彼らの"del Viento" Extraツアーは名古屋を皮切りに中部、北陸、関西と回るもので、日程も自分の休日と合わず今回のツアーレグは聴きに行くことができないなぁと思っていました。しかしよくよくスケジュールを見たら昼間のライヴがある。それも長野県上田のNomadoでの開催です。ここのお店のマスターとは何度か東京でのライヴ会場でお会いし、お話させていただくうちに音楽が大好きで情熱に溢れている方だと感じ、この方のなされているお店でのライヴなら集中して音を楽しむことができるだろうなと一度は訪れてみたかった場所なのです。これは千載一遇の機会。新幹線に乗り信州を目指しました。



思っていた以上にあっという間に着いた上田駅から歩いて会場に到着。想像通りの素敵なお店で、昼間であったこともありますが、高い位置に配された窓からは木々と青空が見え、そこから自然光が優しく降り注ぎます。窓からは新緑色の風が入ってきてなんとも心地よい空間です。そしてさらに心地よさを増してくれたのが、マスターご自身もちゃんとライヴを聴きたいので、開演時間の30分ほど前にラストオーダーとなり、そのオーダーを全て出し終えてマスターも席についてからのスタートになるという今日の方式です。飲食はそれまでの時間に楽しんで、ライヴの時間は我々も音楽に集中できます。

今日のライヴは特別な編成でした。ファースト・ステージは紗奈さんのサックス教室での教え子の与那妃奈乃さんをゲストに招いてのセットです。まずはJinさんがギターでサポートに入り3人によるフィギュアスケートなどでおなじみの「チャールダーシュ」からスタートです。ヴァイオリンやピアノのヴァージョンは耳にする事はあるのですが、サックスデュオによる演奏は初めてでしたが、途中の早弾き(早吹き?)の部分の指の動きに唖然です。自分はクラシックというと堅苦しい先入観があるのですが、知っているメロディーだしすんなりと入っていく事ができました。



sala-sajiのライヴでおなじみの紗奈さんのサックスなのに今日はなんだか響きが違うなぁと素人考えで感じていたらしっかりと解説してくれて、クラシックの時はマウスピースも吹き方も違うし、マイクでなく生音なのだと知り腑に落ちた感じです。続いてこれもCMソングとして聴き覚えのある「リベルタンゴ」。Jinさんのアコギも相まって、力強くも哀愁のあるナンバーでした。



サックス自体近代にベルギーで生まれた楽器で、フランスでクラシック界で広がり、アメリカに渡りジャズと出会ったとの話で、それほど長い歴史のある楽器ではないため、サックスために書かれたクラシックの曲は少ないとのこと。そんな中でベルギーの作曲家サンジュレ氏によって書かれた「デュオ・コンチェルタンテ」(記憶を頼りに検索したので違っていたらごめんなさい!)をJinさんに変わって妃奈乃さんお姉さんでピアニスト未菜美さんを加えた3人で演奏。なんとも美しいメロディーです。もう1曲この3人で届けてくれたのはおなじみの映画主題歌「Endless Love」です。sala-sajiライヴでは紗奈さんひとりでのサックスなので、同時にアルトサックスとソプラノサックスの音を聴くことは不可能ですが、今日は妃奈乃さんとのアルトと紗奈さんのソプラノのデュオが聴かれます。これが驚くほどの"デュオ"だったのです。原曲がライオネル・リッチーとダイアナ・ロスのデュエット曲なのですが、それぞれのパートを二本のサックスが奏でるとふたつの音が紡ぎあってなんとも素敵なデュエットとなったのです。sala-sajiライヴでよくサックスが歌っているなぁと感じる事がありますが、まさにふたつの音が声となってハーモニーを奏でていました。

こうしてファースト・ステージは終了です。ほんの入り口だけなのでしょうが、サックスという楽器の事を色々と知る事ができ、なおかつその場で音として体感できた時間でした。



それを踏まえてのsala-sajiとしてのセカンド・ステージは、ちょうど4年前に発表されたファーストアルバム「Voice」の冒頭を飾る「Time is...」「Loftiness」という流れで、紗奈さんのサックスのマウスピースも変わり、吹き方も変わった事を感じるには相応しいスタートです。先ほどの話でベルギーで生まれたサックスがフランスでクラシックとして発展し、アメリカでジャズに乗って広まったというのがありましたが、それが沖縄ではJinさんのギターと出逢いsala-sajiサウンドになったんだなぁと感じました。

続いては最近では珍しくなったアルバムに入っていないカヴァー曲、ホイットニー・ヒューストンのナンバー「Saving All My Love For You」。sala-sajiでは初めて聴いたと思います。そしてJinさんの恒例長いトークなのですが、5周年を迎えたこともあり、ファースト・ステージの内容も受けてロックギタリストとして活動していたJinさんと、クラシックの世界を歩んできた紗奈さんが一緒に活動するにあたり、それぞれの音楽からの歩み寄りや、葛藤、意見の食い違いなどを経て今に至っているという話を伺い、そう思うと先ほどの「Time is...」がとても感慨深いものとして脳内で反芻されました。その5年間を振り返るように演奏されたのは「winding road」。軽快なナンバーで曲がりくねった道というタイトルは不思議だなぁと思った事もありますが、歩んで来た道を振り返ってたとえまっすぐな道でなくともそれは辛く苦しい事だけではなかったし、目の前に広がる道も同じなんだなと今日そのもやもやが吹っ切れた気がしました。



続く「満天の星」はいつもながらのため息が出るような美しいアンサンブルを聴かせてくれていったん穏やかな気持ちとなり、そこから夏訪れを感じさせてくれる「パステル」、ギターとサックスの音が我々手を取って信州の空へと文字どおり導いてくれる「Leading to the sky」で場内もノリノリです。



ラストはこの曲を聴くためにも今日どうしても来たかった新曲「Rainbow」です。沖縄でのライヴの予約特典としてCDがプレゼントされたこの曲、この機を逃すといつになったら聴くことができるかわからなかったので、聴くことができてよかった!なんて優しい曲なのだろう。メロディーが微笑んでくれている。タイトルを見た時にくっきりとした夏の青空に輝くような鮮やかな虹のイメージがあったのですが、気取った言い方ですが英語のレインボウ(Rainbow=雨の弓)というより、フランス語のアルカンシェル(arc en ciel=空のアーチ)という表現が似合うような、七色に彩られた架け橋によって人と人が結ばれていくというそんな情景が浮かぶ曲でした。これからどんどんふくよかな曲になっていくのか、そして未来に向けてsala-sajiがどんな橋を架けていくのかも楽しみです。



そしてアンコールに応えてくれて始めようかという時にすーっとスタンバイした未菜美さんのピアノによる「ハッピー・バースデー」にのって運ばれてくるケーキ、華やかに祝うクラッカーの音。そうです、マスターが仕組んだ5周年のお祝いサプライズです!目を丸くしてお互いの誕生日を確認しあっていたJinさん紗奈さんも大喜びです。キャンドルを吹き消して、その勢いで「Per favore!!」での宴です。店内をそれぞれ動き回ってのソロを繰り出すふたりの熱演を、我々も総立ちで身体全体で受け止めて盛り上がりました。



意識的に組まれたのではなく偶然が重なったのですが、こうして今日のライヴはそれぞれの道を歩いてきたふたりが出逢い、曲がりくねった道を手探りで進んできて、これから先もあちらこちらに架け橋を渡していくという、sala-sajiの活動を音で感じるようなステージとなりました。そしてもうひとつ。クラシックとポップスのサックスの違いを体感できたと書いたこととは矛盾するかもしれませんが、クラシックとかポップスとかジャズとかロックなどのジャンル分け、分類ってなんだろうってますます思ってきました。守るべきルールや形式などは尊重しますが、ジャンルは「音楽」で、「sala-saji」でいいのではないでしょうか。そんな風に思った、いや思うことができたライヴでした。



あらためまして、Jinさん、紗奈さん、sala-saji5周年おめでとうございます‼︎

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