2016.10.6 In the Soup SHINJUKU LOFT 40TH ANNIVERSARY 40YEARSx40LIVES
『ジュテーム 2016 ~未来の足音~』@新宿 LOFT
10月6日は「ジュテームの日」。
そう制定したバンド、In the Soup。途中中断はしたものの毎年この日にワンマンライヴを行っており、2000年代の初めには日比谷野音で開催するほどだった。と過去形で語っているものの現在進行形のバンドであり、昨年はメジャーデビュー15周年ジュテームの日ライヴを下北沢SHELTERで行い、それはそれは良いライヴだったのだが、この度そのライヴがDVDとして発売される運びとなりそれを記念すると同時に、彼らのホームグラウンドとも言えるハコ新宿LOFTの40周年を祝うという、いろいろ詰まった今年のジュテームの日。以前は通い詰めていたこの会場に足を運ぶのは10年ぶり、いやそれ以上かもしれなく、あらーコマ劇場なくなってるなどと浦島太郎状態の歌舞伎町を奥へと進んで行った。会場に入ると階段降りてどっちに曲がり、左側がドリンクカウンターなどとカラダが覚えていておかしくなった。以前のようにステージ前はぎゅうぎゅうということもなく、フロアのお客さんも適当なスペースを取ってゆったり楽しもうという感じで、若くても30代後半という客層の余裕を感じられた。
場内暗転してオープニングSEが流れたのに、なんだかいまひとつウォーって盛り上がりがないなぁ。そこそこ入っているのに…。仕方ない、ひとつ盛り上がりに行くかとゆったり見ようと陣取っていた後方からフロアのスピーカー前に移動し開演を待った。大学時代の軽音楽部で結成されて以来変わらず20年にわたり活動している4人に、サポートとして鍵盤のひとりが加わって5人編成でのライヴは、初期のライヴ定番曲「ガラクタ」でスタート。もうサウンドも展開も歌詞もインスーそのもの!自分が特にこのバンドにハマったのは、ヴォーカリストの中尾諭介の書く歌詞で、ごく日常的な情景なのに全く想像だにしない角度からの視点で、ごくごく普通の言葉で表現しているところだ。諭介の場合「書く歌詞」と言うよりも「描く詩」という方が自分にはぴったりくる。そんなフレーズは2曲目に飛び出したお気に入りナンバー「光った汗を僕は信じてる」にもあり
「とぼとぼ歩いていくひねくれ曲がった背骨ゆらし
ビルディングの直角でとぎすまされた風に
一人になって飛ばすものがタメ息だなんてさみしいぜ
いつかはお前と笑いたい」
この「ビルディングの直角でとぎすまされた風」という表現がたまらなく好きだ。ただのビル風なのだけれど、都会で打ちひしがれている身に吹き付ける乾いた風が目に浮かぶように描かれていると思うのだ。その歌詞は時には散文詩のように、時には絵本のように、また時には官能小説のよう。ずっとほとんど洋楽しか聴いて来なかった自分には、その内容がダイレクトに伝わる音楽が当時ものすごく新鮮で、歌詞に引き込まれるという聴き方もインスーが初めだったのかもしれない。
未来の足音と名付けられたこのライヴ、進行形のバンドとして来年には製作に入るらしい新しい作品に向けて新曲も披露され、加えてトークで「今夜は挑戦的なライヴでお届けするから」と語っていたように、シングル曲ヒット曲でガチガチに固めたセットではなく、シングルでも忘れかけていた「青春とは」や、アルバム中のえ〜この曲やってくれちゃうの⁉︎的な「魚の手紙」「青いインクのボールペン」「星空の部屋」なども盛り込まれて、今インスーの曲目言ってみてと言われてもすっとは出てこないような曲なのに、イントロが始まると一緒に口ずさんでいるから不思議なものだ。
もちろんライヴ定番曲も外されるわけでもなく、星空についての新曲から流れでセットインした初期の名曲「夜のかけ布団」は切なくもほっこりあたたかな気持ちになることができる素晴らしい曲だ。
後半は「Mojo」「Love Song」「バイブレーション」「テレフォン・ミー」とグイグイと引っ張っていくナンバーが畳み掛けるように演奏される。もう明日の筋肉痛を危惧するのは忘れ、煽られるままに踊り狂っていたのだけど、そん中でもオープニングで感じた違和感の薄い反応は変わらなく淋しささえ感じられるほど。十数年間のお決まりのような揃った手の振りはあるものの、あとは軽くカラダが上下移動するだけ。それぞれ楽しみ方は自由なんだけどなんだか悲しいなぁ。途中のトークでも「昔ね、ARBの石橋凌さんが言われていたんだけども、このLOFTのステージに上がる2、3段の階段と、武道館のステージに上がる階段は、俺にとっては同じなんだって。なるほどなぁ、わかるなぁって思ったのよ。」などと言う振りトークにも、真面目なお客さんたちは「ほ〜」なんて感心しちゃっていて、いやいやここはコアなファンが「武道館のステージ、上がったことあった⁉︎」ってツッコミ入れなきゃと思ったらワンテンポ間に合わずに諭介が自分でオチを語る羽目に。なんだか残念だよなぁ。次回からは速攻でツッコまなきゃ。
ラストは初期からずっと歌われている「グリーングリーン」、そしてこれも大好きなナンバー「川」で締めくくられた。
「どこまでも歩いて行こう
何度でもやり直そう
立ち止まり振り向いても
ここから歩き出すんだ
川の流れを胸に‼︎」
昔からそうなのだが、このサビをこうして大声で一緒にライヴで歌うと、なんだかとても目頭が熱くなるのだ。
アンコールは自分が彼らの軍門に下ったメジャーデビュー曲「風の子」。サビ前で歌詞の通りにみんな紙飛行機を飛ばし、サビでも歌詞の通りにみんな人差し指を立てて風を集める…、素敵なシーンではあるのだけれども、決まった振りだけなんだよなぁ。まぁ、そんな事さえ吹っ飛ぶほどの名曲でここでもまたジーンときていたんだけどね。
またねーと手を振りステージを降りるメンバーたち。フロアに響くのは定番の「バッタービビってる! ヘイ!ヘイ!ヘイ!」のコール。そん中、カーテン代わりのステージスクリーンが降りてきて、これで終わりかぁと思いながらもコールを続けていると、半分まで降りてきスクリーンが逆戻りして、メンバー再登場。「ここまで歌われちゃ、やらないわけにゃいかないっしょ!」とファーストアルバムタイトルトラック「東京野球」!! 想定内の演出なのかもしれないけど、これこそアンコールだよなぁ。すごく満足な気分で終演を迎える事ができた。
こうして今年のジュテームの日ライヴも楽しく終了。酔っ払いや会話の声にイラっとしないライヴハウスでのライヴってやはりいいいなぁと思いつつも、ライヴで盛り上がりたいと思いつつも、目立ちたくはないから誰かやって的な人が多過ぎるのは淋しすぎる。そこらへん巧みなお兄さんたちがどこのライヴでもたくさんいたんだけど、みんな仕事や家庭での自分の生活で手一杯な世代なのかもなぁ。自分も同じような時期はあったからわかるのだけど、当のミュージシャンたちも頑張って活動し続けているんだから、みんな大好きだったライヴや音楽なんだもん、離れないでいてね、そして戻ってきてよねなどと言うことを考えながらネオンと客引きが渦巻く夜の街へと階段を上がっていった。